恋愛

2016年03月25日

咲良がさくとき(第2話)岡山編

<第2話>

翌朝、目覚めると隣には咲良の寝顔。

あの頃に比べるとお互い歳を取ったなと感じる。

微笑ましい。

スマホを見ると妻からのLINE。

「おはよう。鹿児島はどう?出張頑張ってね。子供達もお土産楽しみにしてるよ〜」

現実が待ち受ける。

咲良の寝顔をもう一度見る。

可愛い寝顔。

咲良は天使なのか、それとも悪魔なのか。



咲良「おはよう。起きてたの?早いね。」

俺「さっき起きたところだよ。」

咲良「もうわがまま言わないから。ゴメンね。でも、ありがとう。」

俺は何も言わずに彼女を抱きしめ、口づけを交わす。

動き出した時計の針は、もう止まらない。



帰りの新幹線の約束をして、俺は彼女のホテルを出た。

自分のホテルに戻り、シャワーを浴びて着替える。

妻にLINE。

「鹿児島の夜は芋焼酎が美味しかったよ。今日、帰るけど遅くなるから先に寝ててね。お土産、任せとけ。」



鹿児島での仕事を終え、鹿児島中央駅に15時に待ち合わせ。

2人、咲良と新幹線に乗る。

咲良「昔は、2人で旅行したこと思い出すね。懐かしいな。」

俺「そうだけど、過去にすがらないで、未来に向かっていけよ。」

咲良「わかってるよ。でも、貴方よりも幸せにしてくれる人に出会うのって、難しいんだよ。」

俺「新幹線さくらって、良い響きだな・・・。」



鹿児島から岡山まで、3時間ちょっと。

いろいろな話で、あっという間に時間が過ぎ去る。

名残惜しい。

俺「俺は、岡山で乗り換えだから・・・。元気でな!」

咲良「私も一緒に降りる!」



咲良も新幹線を降りた。

途中下車して、岡山駅前でご飯を食べてから帰ることに。

俺「長旅で疲れてるだろ?1杯だけだぞ。」

咲良「大丈夫。もう次はいつ会えるかわからないんだから。ほんとは今日は帰さない!って言いたいところだけど、我慢するからさ。もう少し、一緒にいて。」

瀬戸内海のママカリとタコを味わいながら、最後の時間を過ごす。



俺「そろそろ終電だよ。さて、帰るぞ。」

咲良「・・・うん。」

岡山駅の改札を入る。


咲良「おやすみのチューしてくれないと、帰らない。」

俺「人前だぞ。恥ずかしいだろ。」

咲良「してくれないと、帰らないから。」


天使でもあり、悪魔でもある。

柱の陰に隠れて、軽く口づけを交わす。


咲良「そんなんじゃ、全然足りないよ。」

俺「もう・・・わがまま女。」


熱く、長い口づけを交わす。


咲良「ありがとう。私、頑張って幸せになるから。」

俺「ああ、幸せになれよ。」


咲良の目から、一筋の涙がこぼれる。


いつか本当の幸せを手にして、咲良がさきますように。

そう祈って、もう一度最後の口づけを交わした。



口の中に広がる、咲良とのたくさんの思い出と記憶。

そして切なさ。

頬を伝って流れてきた涙が、少ししょっぱく感じた。



咲良がさきますように。






<岡山のママカリ>

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2016年03月24日

咲良がさくとき(第1話)鹿児島編

<第1話>

仕事で鹿児島に行くことになった。

人生初の、九州上陸。

新幹線「さくら」に乗っての長旅。



新幹線で時間を持て余した俺は、咲良にLINEを送る。

俺「今、新幹線さくらに乗って、鹿児島に向かってるよ。人生初の九州。」

咲良「えっ、私も新幹線で鹿児島に向かってるところ。今、博多を過ぎたあたり。」

俺「ホント、同じ新幹線じゃん。ミラクル!」



偶然にも咲良と鹿児島で再会なんて、運命を感じる。

夕方遅くに鹿児島に到着。

俺「何食べたい?」

咲良「行きたいところがあるんだけど、一人じゃ怖くてどうしようかと思ってたの。いい?」

二人が向かったのは「かごっま屋台村」。

鹿児島の旬の食材と郷土料理を味わえる小さな屋台が並ぶ。

俺と咲良はカウンターに並び座る。

俺「何飲む?」

咲良「貴方と同じのがいい。」

俺「鹿児島に来たんだから、俺は芋焼酎飲まないとね。寒いからお湯割りで。一緒で大丈夫?」

咲良「ちょっと酔いそうだけど、せっかくだから私もいただく。貴方がいるから酔っても大丈夫だもんね。」

芋焼酎で乾杯。

きびなご、黒豚なんこつ煮、さつま揚げを堪能。

咲良の顔が紅く染まる。



咲良「いつもFacebookで見てるけど、あたたかい家庭を築いて幸せそうね。」

俺「まあね、幸せだよ。咲良は?」

咲良「ほんとはもっと幸せになるはずだったんだけどね・・・」

俺「でも、今でも咲良は輝いてる。いい女だよ。」

咲良「私も、貴方と結婚すれば私も幸せになれたのかな。」

俺「そうかもしれないけどさ。俺よりも、元旦那が良くて選んだんだろ(笑)。」

咲良「そうだけどさ・・・あの頃に戻りたいって思う時もあるよ。」

芋焼酎が身体に染み入り、夜も更けていく。

俺「ちょっと歩こうか?」



夜風に当たりながら、甲突川沿いを歩く2人。

自然と手をつないで、寄り添い合う。

俺「歴史、時間の流れを感じさせる町並みだね。昼間に歩けば楽しめそう。」

咲良「でも、貴方はもう結婚してしまったから、昼間に堂々と手をつないで歩くことなんて出来ない。時間の流れを感じてしまうわ。」

俺「いろんな経験があったから、今咲良は輝いてるんだよ。これから素敵な人との出会い、そして幸せが待ってるはず。」

咲良「そうだといいな。でも、今日だけは未来じゃなくて、幸せだった過去にすがりたい・・・」

俺「咲良らしくもないな。ちょっと飲み過ぎたか?」

鹿児島も、まだ3月は夜風が冷たい。



俺「せっかく芋焼酎で暖まったのに、身体が冷えちゃったね。コーヒーでも飲んで帰ろうか?それとも鹿児島ラーメンでも食うか?」

咲良「身体よりも、心の方が冷えちゃった。今日だけはあの頃に戻りたい。独りにしないで。貴方の優しさで、私のさくらを咲かせて欲しいの。」



止まったはずの時計の針が、15年ぶりに動き出した。






<新幹線さくら>

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<かごっま屋台村>

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きびなご、黒豚なんこつ煮とか・・・写メ撮り忘れた(涙)


<鹿児島ラーメン>

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<第1話はこちら>
 咲良がさくとき(鹿児島編)
<第2話はこちら>
 咲良がさくとき(岡山編)
<第3話はこちら>
 春が来るのはまだ遙か・・・(池袋編)
<第4話はこちら>
 春が来るのはまだ遙か・・・(浅草編)
<第5話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第5話)
<第6話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第6話)
<第7話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第7話)
<第8話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第8話)
<第9話はこちら>
 阿波で心も浮いてきた(第9話)
<第10話はこちら>
 阿波で心も浮いてきた(第10話)
<第11話はこちら>
 ワインの花がまだ開かなくても(第11話)
<第12話はこちら>
 ワインの花がまだ開かなくても(第12話)
<第13話はこちら>
 幸せは涙の中に咲いていく花(第13話)
<第14話はこちら>
 幸せは涙の中に咲いていく花(第14話)

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2016年02月10日

男ごころ 女ごころ

「ねぇ、私のこと本当に好き?」

「何言ってるんだよ。好きに決まってるだろ。」

「でも、私といる時よりもはるかといる時の方が楽しそうだから、はるかことを好きになっちゃったのかと思って。」

「そんなことないよ。さくらが1番だよ。」

「1番って何?2番も3番もいるの?」

「さくらしかいないに決まってるだろ。」

「じゃあ、なんではるかと話してる時はあんなに楽しそうなの?」

「どうでもいいやつだから、何も意識しないで話せるんだよ。さくらのことは好きだから、本気で好きだから、照れ臭いしさ、嫌われたくないから気負っちゃうんだよ。」

「えっ、本気で好きってこと?」

「当たり前だろ。本気だよ。好きな気持ちは俺の方が強いから。」

「そんなことないよ。好きな気持ちは私の方が絶対に強いから。」

「愛してる。だから、もっと自信持てよ!俺の自慢の彼女だぞ!」



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2015年12月04日

大人の恋の行方

「もうすぐ、クリスマスですね。」

『ああ、街を歩いていてもそんな感じだな。そんなに浮かれる歳でもないけどな。』

「実は、最近気になっている人がいて・・・。」

『なんだ?どうした?もうお前もアラフォーに差し掛かる年代にして、第二の青春か?』

「最初は素敵な人だなって思っていただけで、そういうのってよくあるじゃないですか。それが、だんだんと思いが強くなって、最近は夢にまで見るようになってきました。」

『ふーん。意外にプラトニックだな。お前らしくもない。で、相手は独身か?独身はやめとけ。』

「相手は年上で、結婚していて、子供もいて、僕と同じ環境です。」

『いいじゃねえか。憧れのお姉さん、くらいがいいよ。心の中で思っておけ。』

「でも、この好きって気持ちを伝えたいなって、最近思うんですよ。つき合って欲しいとか、恋人になりたいとかの願望はないんだけど、ただ好きって気持ちを伝えるだけでいいから。」

『それって、相手のことを何も考えてないよ。そんなので喜ぶと思うか?喜ばないよ絶対。ただの迷惑だからやめとけ。ただ、久しぶりに恋をした自分に酔ってるだけじゃん。恋を楽しみたいのはわかるけど、相手の気持ちも考えてやれ。嫌われて、今の関係だって壊れるだけだぞ。』

「ちょっとは喜んでくれるかなって淡い期待を抱いてました。たしかに、ただの迷惑かもしれないな。お互い意識して、今までみたいに仲良く出来ないのも嫌だし。でも、好きだから伝えたいな・・・。」

『まあわからなくもないけどな。でも、家庭を壊さないように程々にな。そうやって、悩んでいるうちが幸せだよ。しばらくそうやって青春を楽しめ。クリスマスだしな。』

「悩んでいるうちが幸せ、ですか?」

『そうだよ。この気持ちを伝えて、相手が喜んでくれたら嬉しいとか、もしかしたらデート出来るんじゃないかとか、いろいろ夢が膨らむだろ?そうやって楽しんでいればいいんだよ。行動には移さないで。』

「たしかに、家庭を壊す気もないし、妻を愛してるから、行動には移さないほうがいいんでしょうけどね・・・」

『そんなことで悩んでるなんて、お前は幸せだな。俺だって、そうやって悩んでいる時期が一番幸せだったかもしれないよ・・・。』

「えっ、どういうことですか?それって・・・。

『俺はさ、行動に移しちゃったんだよ。そして、相手も応じてくれて、恋に落ちた。その時は楽しかったよ。でもな、そんな恋には幸せな未来はないんだ。もう引き返せない。引き返せるうちが幸せだ。道を踏み外すなよ。大切な子供と一緒に暮らせなくなるんだからな。人生で、これ以上に後悔することなんて、ないぞ・・・。』

「せ、先輩・・・。」



−連載小説化を検討していたけど、妻の承認が得られなかったため、1話限りのショートバージョンにて提供する大人の恋の物語−







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2013年05月25日

GIFT〜love one another〜 第2話

X'masは、娘と息子のために料理に腕をふるう。

毎年恒例のクリスマスチキンと手作りケーキ。

子供達のリクエストどおり。

旦那とは10年くらいクリスマスなど過ごしていない。

もちろん旦那からはプレゼントなどない。

毎年、手作りのクリスマスケーキを美味しそうに食べてくれる子供達の笑顔が最高のX'masプレゼント。

それだけで充分に幸せ。



それに、今年は。。。

ケンジとの楽しいひと時。

「神様がくれたX'masプレゼントだったのかな。」

大切な思い出として胸に刻み込まれた。



でも、もう思い出してはいけない。

胸の奥に封印しないと。

夢は見ない。

見てはいけない。

目の前の現実という幸せを、子供達の笑顔を、大切に守らなければならないんだから。




「たぶん、人生で男の人とKissをすることなんて、もう二度とないことだろうな。。。」

ケイコは自分にそう言い聞かせた。





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2013年05月24日

GIFT〜love one another〜 第1話

X'masは赤ちゃんを囲みながら家族水入らずで過ごし、年末年始は実家に帰ったケンジ。

家族の絆を再認識する時間が流れる。

胸の中につかえる罪悪感と背徳感。

夜、布団に入り寝ようとすると、ケイコの笑顔が思い出される。

「こういう風に終わって良かったんだ」 そう、言い聞かせる。

それが正しい選択。



年が明け、また現実の多忙な日々が戻る。

仕事は忙しい。

忙しくて、幸せだ。

いろんなことを忘れさせてくれる。

「家族のために、チビのためにも、頑張らないとな。」 充実した日々。



「ケンジさん、最近輝いてますね!なんかいいことあったんですか?」 昼飯を食いながら、ジュンペイが声をかける。

「まぁな。守るべきものがあると、男も強くなるんだよ。お前もそのうちわかるさ。」 軽くケンジが返す。

「今日は夕方から営業会議ですよね。終わったらパァーと行きましょうね!」



営業会議。

3月は多忙だ。スケジュール確認のため手帳を開く。

3月19日に赤いマークが。

「ケイコさんの誕生日だ。」

忘れかけていたケイコを強く思い出す。


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2013年05月23日

GIFT〜love one another〜 Prologue

こないだリメイクした大人の恋の物語「Xmasの贈り物」。

続編を望む声をいただきありがとうございます。

ご期待に添えるかどうかわかりませんが、ケンジとケイコの恋の物語の続編をStartしたいと思います。

タイトルは「GIFT〜another one love〜」

見切り発車な感じで、結末もまだイメージ出来ていませんが、楽しんで読んでいただけるようゆっくり掲載していきますので、よろしくお願いします。



<主人公>

ケンジ

28歳営業マン。入社5年目。
そして結婚3年目。今年子供を授かったばかりであり、父親としても、人間としても大きく成長していく年頃。


ケイコ

37歳。一流企業に勤める夫、中学生の娘と小学生の息子がいる家庭。夫は単身赴任が長いため、実家の母と同居。昼間は外で働いている。



<前作「Xmasの贈り物」のラストシーン>

『ねぇ、俺のことを忘れさせてくれなきゃ終われないよ。』 ケンジが悲しい目でケイコを見つめる。

ケイコはしばらく無言で考えた後、目を閉じ、ケンジにもたれかかり、ケンジの唇に重なり合う。

『ばーか。そんなことしたら本気で忘れられなくなるだろうが。Merry Christmas !』

ケンジはそう囁いて、深く長い口づけをした。



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2013年05月20日

Xmasの贈り物(remake版) 〜後編〜

Xmasの贈り物〜1つの恋の物語〜

※この物語は、4年半前に僕が書いた短編小説です。かけだし金融マンのblog(2008年12月)に掲載されているもののリメイクです。当時の僕の妄想の全てが盛り込まれています。頭ン中どんなんだったんだろう。。。

さて、後編の開始です。


<第14話>

翌朝、ケイコは普段通りに早起きして、朝ご飯をつくり、子供たちを起こすために子供部屋に入る。昨夜のときめきと心地よい気持ちが強く残っていて、久しぶりに幸せで満たされている感覚がある反面、強い罪悪感が心の中で芽生え始める。その罪悪感は、子供たちの安らかな寝顔を見たときに決定的なものとなって、ケイコの心を揺るがし始める。

ケンジと過ごした時間 ケンジからかけられる優しい言葉 ケンジに握りられる手の温もり 自分に女性として魅力を感じてくれた全てのことに対する女性としての1つの幸せ

自分が守るべき家族 命より大切な子供たちの愛 親として 妻として 人間としての使命と幸せ

ケイコは複雑な心境で、通勤電車に乗り込む。ケイコの携帯にメールが届く。

『昨日は楽しい時間をありがとうございました。ケイコさんの魅力にドンドン惹かれていく自分がいました。
また2人で飲みにいきましょうね。ケンジ』 ケイコは、特に飾り気もないただの1通のメールがこんなにも嬉しいということを知った。


<第15話>

朝会社を出て、ケンジのメールに喜び、家に帰り、子供たちと食卓を囲み罪悪感に悩むケイコ。その繰り返しの日々が続く。

正しいか正しくないかの答えは出ない。おそらく正しくないということはわかっている。ただ、変わらない日常の中で、ケンジと出会ってから、家族に対して、周りに対して、優しくなった自分がいた。

会社の後輩からも、『雰囲気変わりましたね』 なんて声をかけられるようになった。

『お化粧のノリもいいのかもしれない。なー』 なんて考えながら会社を出たところでケイコの携帯が鳴る。

『お疲れ様です。高橋です。もう会社出られました?』 ケンジからの電話だ。

『お疲れ様です。ちょうど会社を出たところですよ。』 ケイコが平静を装いながら応える。

『ちょうど近くまで来てるんで、30分だけコーヒーに付き合ってもらえませんか?』 またケンジに逢うことに少なからず危険を感じながらも、ケンジにもう一度逢いたい気持ちを抑えられず、ケイコは待ち合わせの駅前の広場の大きなChristmas treeに向かって歩き始めた。


<第16話>

賑やかなカフェで、エスプレッソとキャラメルマキアートで乾杯。ケイコとケンジの久しぶりの再会。

『もうすぐChristmasですね。ケイコさんはお子さんにプレゼント買ったんですか?』 ケンジの甘い顔にキャラメルの香りはよく似合う。

『前々からリクエストがあったんで、もう準備はしてるんだ。高橋さんは娘さんに何贈るの?』

『ケンジって呼んでくださいよ。つれないなー。』 ケンジが微笑む。

『ヒスミニの可愛い服を買いましたよ。ケイコさんは欲しいものないんですか?頑張ってる自分にご褒美とか。』

『欲しいものねー。特にないかなー。ケンジくんは?』 ケイコが聞き返す。

『僕は欲しいものがあって、サンタさんにお願いしているところ。』 ケンジの目が輝く。

『欲しいものって何ー?』 ケイコが普通に聞き返す。

『僕はケイコさんが欲しい。』 ケイコの目をしっかり見つめて、ケンジが伝える。カップを持つケイコの手が止まる。

『お酒の入ってない時に言おうと思ってた。あの日以来、ずっとケイコさんのこと考えてる。』 2人の顔が紅に染まる。

決して許されない罪深い恋だと最初からわかっていたとしたって、もう一回 ケイコに伝えたい。ケンジの気持ちがケイコに届く。


<第17話>

ケイコは驚きで凍りついた。こんなに賑やかな場所で、こんなに大勢の人がいる中で、『ケイコさんが欲しい』 なんて言われるなんて。

ケンジの大胆さに驚くとともに、ケンジの真剣さが心に響く。

『急にそんな話しても驚きますよね。お互いの家庭を大切に尊重した上で、本気の恋をしたい。真実の愛を見つけたい。そう想ってました。都合が良すぎて自分勝手な恋と思われるかもしれませんが、そうじゃないことも、僕がそんな男じゃないことも、ちゃんとわかってくれると信じてます。』 ケンジが想いを全てぶつける。

『今週の金曜日に飲みに行きましょう。もし僕の勘違いだったり、僕の一方的な盛り上がりだったとしたら、金曜日に教えてください。お願いします。』

『そんな風に想ってくれていたことも、今日こんなことを言われることも、想像もしてなかったし驚いてる。ちゃんと頭の中を整理したい。』 周りはカップルだらけのクリスマス前のカフェの中。

ケンジとケイコの間だけ、周りとは違う空気が流れている。アダムとイブのいたずらの1つ。


<第18話>

家に帰り、夕食の支度をするケイコ。夕食は最近マイブームの豆乳キムチ鍋。

『お母さん最近疲れてるみたい。大丈夫?』 娘が心配そうに聞く。

『そうかしら。寒くなってきたし、年末でバタバタしてるからかなー。しっかりご飯食べて頑張らないとね。』 ケイコは笑顔で子供たちに返す。

何か困ったことや悩み事がある時には、いつも母親や子供たちに相談してきたケイコ。でも今回ばかりは誰にも相談なんて出来ない。だからと言って家族には心配なんかかけてはいられない。

家族みんながお風呂に入った後、ケイコはゆっくり湯船につかり、ケンジのことを思い出す。

『私のことを真剣に想ってくれる人なんて、ケンジくん以外にはもう誰もいないんだろうな。私の人生の中で、もうたぶん。そう考えると、なんか寂しさが溢れてくる。』  ケイコは心の中でそう感じた。

恋なんかとうの昔に忘れていて、そんなものなくても楽しくて幸せな日々が長く続いていた。だけど一度恋を思い出しただけで、こんなにも幸せで満たされたり、悲しく切ない想いをするなんて、想像さえもしていなかった。

旦那とはしばらくまともに話すらしていない中で、金曜日が近づいてくる。Christmasの2日前の金曜日の夜が待っている。


<第19話>

待ち合わせ場所はこの前と同じChristmas treeの前。いつもの笑顔でケンジが待っている。

『今日はありがとうございます。美味しいコラーゲン鍋鍋のお店があるんで行きましょう。』 ケンジがケイコを促す。

とりあえずビールで乾杯。

ケンジはこの前の告白のことなどなかったかのように、お互いの考え方や生き方をもっとよく知ろうと、普段の話、仕事の話、小さい頃の話、最近のマイブームの話で会話を盛り上げる。

『コラーゲン鍋はお肌にいいですからね。ケイコさんの美貌がいつまでも続けばお子さん達も大喜びですよ。美貌に一番効くのは恋なんですけどね。』 ちょっとしたケンジの言葉がケイコを暖かく包み込む。

美味しい料理とお酒とケンジの笑顔と言葉と優しさ。

心も体も満たされる幸せな時間。

でも、このままケンジを受け入れて、ケンジを信じてついて行って、幸せは待っているのかどうか、幸せがいつまでも続くのかどうか、答えが出ないで時間が流れる。

『お腹もいっぱいで幸せですね。僕は最初からずっとドキドキでしたが。次のお店でゆっくりお話しましょうね。』 いよいよ2人の恋が動き始める。


<第20話>

2軒目はこの前と同じ店。雰囲気のいいカップルシートのカウンター。

ケンジはジンライム。ケイコはグランベリーのカクテル。

『僕、ケイコさんをもっと愛したい。』 さっきまでとケンジの雰囲気が変わる。

『僕もそうだし、ケイコさんもそうだけど、お互い大切な生活があって、家族があって、自分がいる。それだけで幸せだった。他には何も望んでいなかった。ケイコさんに逢うまでは。でもケイコさんに出会い、話をしているうちに、軽く触れ合ううちに、ケイコさんと恋をしたい、その想いが出てきて、良くないことだってわかっててもその気持ちは消えなかった。信じて欲しい。』 ケンジが気持ちを伝える。

『ケンジくんにあってから、毎日が楽しかったし、メールが来る度嬉しかった。そんな気持ちは何年ぶりだろう。でも家に帰って子供たちに会えば、罪悪感に悩まされていた。ケンジくんのことが好きだけど、本当に嬉しいけど、やっぱりお互い良くないよ。ツラい思いをするだけ。だから今ならまだ間に合うよ。ちゃんと奥さんとお子さんだけを愛してあげなきゃ。』 ケイコが初めて気持ちを伝える。

『家族はもちろん愛してるし、子供は何よりも大切なもの。ケイコさんとの恋ならお互いを高めあうことも、お互い幸せになることも出来るんじゃないかな。この本当の気持ちを信じたい。』 ケンジは引かない。

『まだ出会ったばかりだし、最初だけ盛り上がってるだけかもしれないよね。恋してる自分に恋したいとか。ちょっと冷静に考えた方がいいよ。私みたいな年上なんか好きになるなんてさ。』 私と恋を始めても、きっとケンジにも自分にも幸せなどやってこないことを、ケイコはちゃんとわかっている。

突き進みたいケンジと、冷静に見つめ始めたケイコのやりとりは、切り口を変え、理屈を変えて、長い間カウンターに響き渡るのだった。


<第21話>

お互いの幸せのためと、ケンジを思いとどまらせるケイコだが、ちょっとでも気がゆるむとケンジの気持ちに応じてしまいそうだ。

『私だって本当はね、恋を始めてもいいかなって思ったりもした。ツラい時に優しくされたいし、頑張った時は褒めて欲しい。ケンジくんになら本音で甘えることが出来て、女としてもちゃんと見てくれるんじゃないかって。でもね、私には子供達が一番大切で絶対に裏切れない。ケンジくんもきっとそうだよ。』 ケイコの気持ちがケンジにも届きはじめる。

『じゃあ待ちますよ。ケイコさんが俺を信じて受け入れてくれるまで、それまで待ちますよ。』 ケンジがグラスを一気に空ける。

『そんな出来ない約束なんてするもんじゃないよ。ちょっと冷静になって考えてみて。もし、10年後も同じ気持ちだったらその時はいいわよ(笑)。』

『もっと男を磨いて、また気持ちを伝えに来ますよ。何度でも。それまで変な男に騙されたりしたらダメですからね。』 ケンジが微笑み、ケイコも笑みを浮かべる。

もうすぐ日付が変わり、クリスマスイブを迎える。


<第22話>

願いは叶わなかったケンジだが、気持ちを伝えることが出来て、晴れ晴れとした表情を浮かべる。笑顔のケンジとケイコが、店を出てエレベーターに乗り込む。

『こうやって勇気を振り絞って手をつないだ時、嫌がられたらどうしょうとドキドキした。握り返してくれた時は本当に嬉しかった。』 ケンジはそう言いながら、ケイコの手を優しくつなぐ。

『私もね、すごくドキドキしたしとても嬉しかったよ。なんだか信じらんない感じだった。』 ケイコもまた握り返す。

駅までの残された時間。もう二度と2人で逢うこともないだろうことは、2人とも薄々感じている。誰にも邪魔されない2人だけの時間、誰にも邪魔することが出来ない2人だけの空間。

駅はもう目の前。終電の時間も近づいてゆく。駅に入り柱にもたれかかるケンジ。

『俺、逢えてよかったよ。』

『私もだよ。』 ケイコが向かいあう。

『ねぇ、俺のことを忘れさせてくれなきゃ終われないよ。』 ケンジが悲しい目でケイコを見つめる。

ケイコはしばらく無言で考えた後、目を閉じ、ケンジにもたれかかり、ケンジの唇に重なり合う。

『ばーか。そんなことしたら本気で忘れられなくなるだろうが。Merry Christmas !』 ケンジはそう囁いて、深く長い口づけをした。


【完】


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2013年05月19日

Xmasの贈り物(remake版) 〜前編〜

Xmasの贈り物〜1つの恋の物語〜

※この物語は、4年半前に僕が書いた短編小説です。かけだし金融マンのblog(2008年12月)に掲載されているもののリメイクです。当時の僕の妄想の全てが盛り込まれています。頭ン中どんなんだったんだろう。。。


<第1話>

『お疲れ様です。お先に失礼します。』 5時半頃、ケイコは会社を出て駅へと向かう。秋風が身にしみ始める季節。

『今日は温かいお鍋にしようかなー』 と独り言をつぶやきながら、子どもたちが待つ家へと向かってゆく。

ケイコは今年37歳。いわゆる一流企業に勤める夫がいて、中学生の娘と小学生の息子に囲まれた、そんな普通の家庭。普通以上の理想に近い家庭。

実態はちょっと違う。

夫はここ数年単身赴任中で、家庭には寄りつかない。もともと同居していた頃から、つきあいだ接待だと家庭をかえりみることなんてなかったし、女の影もちらほら見え隠れしていて、単身赴任という名目で別居が出来てお互い清々している。ケイコは子どもたちを連れて、単身赴任中だけということで、実家の母と同居して、昼間は外に働きに出る。

『子どもたちは私が守る』 そんなケイコの冬物語。


<第2話>

ケイコは最寄り駅そばのスーパーで買い物をするのが日課。夕食の準備は自分でする。そして子どもたちと夕食を食べる。

それだけは譲れない。その信念は変わらない。帰宅して夕食をつくり、子どもたちと食卓を囲む。そして台所を片付け、明日の準備をする。子どもたちが寝るまでは休まる暇がない。でも、絶対に仕事を言い訳にはしない。

私は夫とは違う。そう自分に言い聞かせて。子どもたちが寝静まった後、ゆっくりお風呂に入るのがささやかな幸せ。深夜にベッドに入り、朝早くから朝の準備。こうしてケイコの毎日が過ぎていく。

家庭を守り、子どもを育てて、外で働く。それが当たり前であり、毎日のごく普通の生活。それがたぶん、親として、人間として、生きているということなんだ。


<第3話>

ケイコの職場はオフィスビルが立ち並ぶ街の一角にある。仕事は経理だったり庶務だったり事務やら雑用やらの何でも屋さん。与えられた仕事は真面目にテキパキこなすタイプであり、若い女性陣からの評判も悪くない。事務所はそんなに大きいわけではないが、毎日多数の営業マンや業者の人達が出入りする。

たくさん事務所に訪れる営業マンたち。その中にケンジもいた。

ケンジ28歳
ケイコ37歳。

ただの営業マンと普通の事務所の女性。そんな2人の、クリスマスの物語。


<第4話>

ケンジは営業マン。実質的な営業ノルマは厳しいが、人脈が広がっていく仕事がそれなり楽しい生活。入社5年目で、営業も自分の形を築き上げつつある年頃。

そして結婚3年目。今年子供を授かったばかりであり、父親としても、人間としても大きく成長していく年頃。

『ジュンペイ。今日ちょっと飲んで帰ろうか。』 営業から戻ったジュンペイに話しかける。

『いいっスけど、最近飲み続いてますよね。ご家庭大丈夫っスか?』 ジュンペイが一応気遣う。

『仕事には打ち合わせが必要だろ。打・ち・合・わ・せ。』 ケンジが強引にジュンペイを連れ出す。

『いやー寒いですねー。こんな日はやっぱお湯割りですよね。梅入りで。』

『こう寒い日が続くと彼女に温めてもらいたくなんねーのか?早く新しい彼女見つけろよ。』 そう言ってケンジが生中を流し込む。

『彼女は欲しくてもなかなか出来ないんですよー。それよりケンジさん赤ちゃんはもうハイハイしてるんですか?』 ジュンペイが豆乳鍋をつつく。

『なんかさー。仕事もそれなりにうまくいってて、子どもも超可愛いけど、なんか家に帰りたくないんだよね。』 ケンジがジョッキグラスを見つめながら語り始めた。


<第5話>

『仕事とか接待とかで帰りが遅くなるとさ、「男は仕事だけやってれば許されるんだからいいわね」って、冷たい顔をされるんだ。』 ケンジは遠い目をして続ける。

『子育てってさ、かけがえのない幸せである反面、ものすごくエネルギーを費やす。嫁がさ、家事と育児で家庭を切り盛りして大変なのはよくわかる。感謝こそすれ、非難なんかするつもりはないよ。でもさ、俺だってクタクタになりながら仕事してきて、家族のために嫌なことがあっても耐えて。それなのにそんな冷たい態度が続けば、俺もちょっとキツいよな。なんのために頑張ってんのかなって。』 ケンジがビールを流し込む。

『うーん。難しいですね。。。』 ジュンペイが唸る。

『なーんて本当に贅沢な悩みだよな。わかってるんだ。理屈じゃなくて、頑張るしかないって。』 いつもの笑顔のケンジに戻った。

『まだ8時だな。よーし、』

『じゃあパァーッと行きましょうか。最近いいキャバクラ見つけたんですよ。ナオミちゃんって可愛い子が、』

『ばーか。俺は妻子のいる我が家に帰るよ。ジュンペイもいいかげん落ち着けよ。』 ジュンペイの優しさを感じながら、早めに帰路につくケンジだった。


<第6話>

『今日は会社の忘年会だから帰りが遅くなるね。』 子ども達にそう伝え、ケイコは家を出る。ケイコの会社では12月第一週に事務所の忘年会を行うのが恒例。所長の意向で、社員だけではなく、取引先や業者にも幅広く呼びかける。もちろんケイコも参加し、ケンジも参加する。

取引先回りで遅れて到着したケンジは、空いている下座の席に腰を下ろし、始まったばかりの所長の話に耳を傾ける。そこはケイコの隣。乾杯の音頭の前に、グラスにビールを注いでいく。ケイコがケンジのグラスに注ぐ。

『お疲れさまです。高橋さんですよね?』 ケンジははっと目を上げ、恐縮する。

『高橋です。いつもお世話になってます。』 今度はケンジが注ぎ返す。

『いつも電話いただいたり、来店されてるんで名前は覚えてますよ。私は木村といいます。よろしくお願いします。』 2人の瞳が交差する。

『乾杯〜』 乾杯の合図でケンジとケイコのグラスが触れ合う。

2人のグラスを持つ手には、それぞれの指輪が煌めいている。


<第7話>

席が隣とは言え、ケンジにとっては単なる飲み会ではなく、仕事の一環。楽しく会話している時間などなく、担当者、課長、部長と挨拶にお酌と忙しい。ビール瓶を持っていろんな人に注ぎに行く度に、注いだ以上のお酒を飲まされるのが営業マンの定め。ケンジはいつもの営業スマイルで、注がれたお酒は飲み続けた。

ケイコは普段飲まないお酒を久しぶりに飲んだこともあり、顔がほんのり赤みを浴びている。今日くらいはいいかなーとちょっとずつ飲み始めたが、いつの間にかビールも進んでいた。トイレから戻る途中、ケンジは店員さんな水を貰い一気に飲み干す。ちょっと酔いもまわり始めており、小休止の意味も込めて、ケイコの隣の席に戻った。

『お疲れさまでーす。大変ですねー?』 ケイコも酔いが回り饒舌になる。

『まあ仕事ですからねー』 ケンジも軽いノリで返す。

『木村さんはお酒強いんですか?普段も旦那さんと飲まれるんですか?』 ケンジはケイコの左手のリングを意識して会話を膨らませる。

『普段は全然飲まないんですよー。ホント久しぶりですよ。旦那はほとんど家に帰らないですし。』 ケイコが真面目に応える。適当に話を合わせればいいものを、根が真面目なので、旦那の話も普通に出してしまう。

『こんな素敵な奥さんがいるのに帰らないなんて旦那さんも大変ですね。』 営業トークの中にケンジの本音が入り交じる。


<第8話>

『高橋さんってお上手ですね。』 ケイコもお世話とは言え悪い気はしない。家と事務所の往復で、ほとんど飲み会にも顔を出さないケイコにとって、男に褒められるのは久しぶりだ。

『木村さんのような人が家で待っていたら、毎日帰るのが楽しいだろうなー。』 ケイコの目をケンジが見つめる。ちょっと動揺気味のケイコ。

『でも高橋さんもご結婚されてますよね?まだまだ新婚さんみたいな感じなんじゃないですか?お子さんはいらっしゃるんですか?』 

『結婚3年目で今年子供が生まれました。まあ幸せって言えば幸せなんですけどね。実際はいろいろありますが。』 しばらく休んでいたケンジがまたビールを飲み始める。

『じゃあ一番頑張らなきゃならない時期ですね。仕事も家庭も。』

『そうですね。木村さんと話せて元気が出てきました。またちょっと頑張ってきますね。』 そう言ってケンジはビール瓶とグラスを片手に、また飲むという名の戦場へと舞い戻って行った。

ケンジと話したことにより、自分の幸せだった時期のことを思い出すケイコがいた。


<第9話>

一次会が終わり、ケイコは一人で駅に向かう。駅前の広場は12月に入ったばかりだというのにクリスマスモード一色だ。

『今年のクリスマスはどこのケーキにしようかな。』ケイコは独り言をいいながらクリスマスツリーを見つめる。

『昔は張り切ってクリスマスプレゼントとか選んだりもしたし。可愛いコートで着飾って、ディナーに連れて行ってもらったりもしたなぁ。』 ケイコの胸の中で、恋をしていた時代の記憶が蘇る。

『私も年をとっちゃたね。』 結婚してからも、家庭のため、子供のために頑張り続けた自分に話しかける。

『でも、子供たちも元気だし、今年もまた子供たちとクリスマスを過ごせるだけでも幸せだと思わなきゃね。』 そう言い聞かせて自宅に電話を入れる。母も子供たちも、たまにはゆっくりしておいでよと気遣ってくれる。

そんな家庭の優しさを感じながら、ケイコはいつものケイコに戻り、駅のホームへと歩いてゆく。


<第10話>

一次会が終わり、ケンジは一人で駅に向かう。駅前の広場は12月に入ったばかりだというのにクリスマスモード一色だ。

『今年のクリスマスは、家族3人で過ごす初めてのクリスマスだな。』 ケンジは独り言をいいながらクリスマスツリーを見つめる。

街を歩く若いカップルたちを横目に、『俺もパパか』とつぶやく。酔いが回り、子供の顔を思い浮かべて、自然に笑みがこぼれる。人生はうまくいっている。仕事もそう。プライベートもそう。贅沢なんか言ってられないことはわかっていても、ロマンを求めてやまない男の性(さが)を感じるケンジがいた。


<第11話>

ホームで電車を待つケイコ。ちょっと遅れてケンジが同じホームにたどり着く。エスカレーターを登ったケンジは、電車を待つケイコの姿を見つけ、ケイコに引きつけられるように、一歩ずつ近づいていく。

『また逢えましたね。』 ケンジがケイコの隣に並び、話しかけた。
『高橋さん。。。』 急に声をかけられたからなのかわからないが、とてもドキドキしている自分にケイコは驚く。

『なんか素敵な女性が立っているなって思ってたら、木村さんだったんで、つい声をかけちゃいました。迷惑でしたよね。』

『そんなことないですよ。でも高橋さんって本当にお世辞が上手いですね。』 今日飲み会の話や、お互いの住んでいる所や生活の話で会話も楽しく弾む。

『次の駅前にいい雰囲気のお店があるんですよ。これからちょっとどうですか? って本当はお誘いしたいところですが、ケイコさんのお子さんも帰りを待っていますよね。今度2人で飲みに行くときにご案内しましょう。』 ケンジがケイコを誘う。

断りやすくて相手をいたわり、また相手の気持ちを探ることが出来る誘い方。一瞬の葛藤の後、ケイコはケンジの誘いに応じた。

『じゃあ少しだけ寄りましょうか。あまり遅くならないように。』 そう言って、肩を寄せ合って、2人は途中駅で降りて夜の闇に消えていった。


<第12話>

2人は駅からちょっと歩いたところにある雰囲気のいい居酒屋に入った。カウンターに通されたが、二人掛けの可愛いシートに腰をおろす。

『ここ雰囲気良くないですか?』

『なんか凄くお洒落な感じですね。こんなお店なんて若い頃にしか来たことないです。私なんか似合わないかもしれないですよね。』 店にとしても、何よりケンジの飲む相手としても、自信のないケイコが控えめに話す。

『全然そんなことないですよ。今日お逢いした時から、本当に素敵で魅力的な女性だって、ずっと感じていますから。』 ケンジの言葉には半信半疑なケイコだが、忘れかけていた感情が蘇りつつある。どれくらい時間が経っただろう。柔らかくて、居心地が良くて、いつまでも続いて欲しい特別な時間が流れた。

日常が迎えに来ることを、現実が迎えに来ることをわかっているけれど、ちょっとでもこの時間が続いて欲しいと
お互いそう強く願っていた。

『名残惜しいけど、今日はそろそろ帰りましょうか。』 ケンジがカウンターを立ち上がり、会計を済ませる。ケイコがお金を払おうとするが、ケンジは受け入れない。

『じゃあ今度デートするときには、ちょっとだけご馳走になりますね。』 完全にケンジのペースで物事が進む。ケンジの優しさと男らしさ、そしてデートという言葉に、ケイコの心は揺さぶられていくばかり。


<第13話>

2人は支払いを済ませてエレベーターに乗る。他には誰もいない。ケンジはケイコの手にそっと触れる。そして優しく握りしめる。楽しく会話が弾んだカウンターとは対照的に、エレベーター内は沈黙と緊張感に包まれる。エレベーターを降りた後も、2人の手は離れない。

『タクシーで送っていきましょうか?』 ケンジが沈黙を破る。

『まだ10時過ぎたばかりなので、電車で大丈夫ですよ。』 お互いの手から伝わる温かさい人柄を感じながら、2人は駅へと歩いてゆく。

『この時間がずっと続けばいいのに』 無意識にケンジが言葉を発する。ケイコは何も言わない。心の中で頷くだけ。ただそれだけで充分に伝わる。駅のホームにたどり着く。

『また、ケイコさんと2人で逢いたい。』 今までと異なる口調。

『私も、また逢いたいな。』 今はもう止まらない。無情にもケイコの乗る電車が到着する。

『今日はありがとう。また連絡するね。』 ケンジはケイコの髪に触れ、耳元でささやいた。こうして、2人はまた日常という世界へ舞い戻っていくのだった。

ケイコはいつもと変わらない様子で、家族と子供たちが待つ家へと帰り、いつものとおり眠りにつく。何も変わらない日常。

ただいつもと違うのは、ケイコの心の中のロウソクに、ケイコの胸の中のChristmasキャンドルに、優しく温かい火が灯ったことだった。

決して許されるものでもなく、決して認められるものでもない、1つの純粋の恋。


【前編・完】


kou_blue97 at 00:42|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2010年02月24日

朝マックデート

早朝から若い女の子と朝マックデートしてきました。

妻にはもちろん内緒です。

僕「せっかく2人になれたんだから、マックでも寄ろうか?」

彼女「うん。そうだね。」

彼女の手を握りながら、店の中に入る。

僕はブラックコーヒーを注文。

コーヒーが苦手な彼女はオレンジジュースと大好きなナゲットを注文。

もちろん支払いは男の僕が済ませて、トレイを持ってボックス席へ。

店は空いていることもあり、ちょっと恥ずかしいが彼女の向かいではなく隣に座って体を近づける。

彼女のあまりに可愛さに、自然と髪の毛や手に触れてしまう。

ほんのわずかだけど、誰にもじゃまされたくない、2人だけの秘密の時間。

幸せなひと時。

僕の人生を幸せにしてくれる、1つの愛の形。
かけだし金融マン(mixi)でした。

続きを読む

kou_blue97 at 21:28|PermalinkComments(1)TrackBack(0)
Profileです。

kou_blue97

〇札幌生まれ札幌育ち。現在は東京在住(←徳島←千葉…)。転勤族のサラリーマン。ミスチル世代の団塊ジュニア。
〇好きなモノ
 アメフト観戦、ミスチル鑑賞、blog執筆、子供とおでかけ、HKT宮脇咲良を応援、転勤で知らない土地を満喫、現実と妄想の狭間で微笑ましく生きる、小さな幸せのかけらを積み重ねる。

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