小説

2016年10月23日

クリフトン年代記

僕が最も好きな作家「ジェフリー・アーチャー」の中でも、最高傑作だと思う物語。

「クリフトン年代記」

2014年8月18日の記事(←クリフトン年代記に関する)

2015年8月17日の記事(←クリフトン年代記に関する)

ここ数年は、夏頃にシリーズ最新刊をまとめ読みするのが習慣になってます。

でも、年1部くらいの刊行ペースなので、前の物語の詳細を忘れてしまいます。

というわけで、あらすじをまとめているサイトがあったので、来年のために拝借。

来年は、これを読み直せば、最新刊にすぐに入れる。

(自分のためだけの備忘記事です)



第1部 「時のみぞ知る」

〇メイジー・クリフトン 1919年
主人公ハリー・クリフトンの母メイジーが、夫アーサー・クリフトンと結婚する前に別の男と情を交わしたことが、この壮大な物語のはじまり。

〇ハリー・クリフトン 1920年-1933年
イギリスの港町ブリストルが舞台。ハリーは、ウェイトレスとして働く母と共に祖父母、造船所で働くスタン伯父と暮らし、父は第一次世界大戦で戦死したと教えられていた。下層階級の貧しい家に育ったハリーは、世界を旅する船乗りを夢見る少年。勉強嫌いで、伯父が働く港に入り浸っていた。その港の端に見捨てられた鉄道客車に住むオールド・ジャック・ターと、人生の師とも言うべき本当の友人として出会う。
ハリーは、稀なる美声に恵まれ、ミス・マンディの聖歌隊員として必要な読み書きは、担任のホールコムから学び、学期が終わった休暇中はオールド・ジャックの教えを受けた。
聡明なハリーは、聖歌隊奨学金を得て、上流階級の子弟が入る進学校セント・ビーズへと進む。寄宿学校であるセント・ビーズで、優等生のディーキンズ、バリントン海運の御曹司ジャイルズ・バリントンという親友を得る。
富裕層の監督生フィッシャーから目の敵にされ、一度は夜中に寮を抜け出すが、オールド・ジャックに諭され朝に戻った。ジャイルズの誕生日にディーキンズと共にバリントン家に招かれた際に、ヒューゴ・バリントンに質問され、ジャイルズより誕生日が前だと知られる。また、このときジャイルズの妹エマを知る。声変わりしてソプラノを失ったハリーは、聖歌隊奨学生ではなく、一般公募奨学生を目指してブリストル・グラマー・スクールを受験することになった。その結果は・・・

〇メイジー・クリフトン 1920年-1936年
アーサー・クリフトンと結婚したメイジーは、8カ月後に男の子を出産し、ハロルドと名づける。結婚前にヒューゴー・バリントンと情を交わしたが、アーサーの息子で無いと思わせるところは無かった。
ある金曜日、アーサーが戻らず、スタンが5ポンド札の束を持って帰ってきた。スタンは翌日、住居侵入罪で逮捕され、金の出所はバリントンだと主張するも認められず有罪となる。働き手を失い、仕事を得る必要があったメイジーは、職を探し、バリントン海運の清掃員に申し込んだが、素っ気なく断られる。ようやく、ミス・マンディのつてでミス・ティリーの軽食堂のウエイトレスの職を得ることができた。
デートしたエディ・アトキンズから酒場のウエイトレスの監督者として、ロイヤルホテルの総支配人であるミスター・フランプトンからホテルのティールームの責任者としてそれぞれリクルートされ、オールド・ジャックのアドバイスもあり、ロイヤルホテルに転職する。ロイヤルホテルのティールームの改善に努め、テールームは客で溢れるようになる。
ブリストル・グラマー・スクールにハリーは合格したが、奨学生にはなれなかった。そのためメイジーはハリーの学費を負担できる仕事が必要になった。アイルランド人の金融関係者パトリック・ケイシーの助言の元に銀行から借り受けを行い、店を手にした。店は次第に繁盛していったが、放火による火事で焼けてしまう。メイジーはまたロイヤルホテルに戻り、職にありつくが、ハリーの学費を賄うには足りなかった。メイジーはオールド・ジャックと作戦を練り、ヒューゴー・バリントンと対決し、ヒューゴーの息子であるとしてハリーの学費の面倒を見るように求めるが撃退される。危うくハリーを退学させなければならないところだったが、店の保険金が降りることになった。

〇ヒューゴー・バリントン 1921年-1936年 
契約期限の迫った船の建造を急ぐため、ヒューゴーは作業中に船内に閉じ込められたアーサー・クリフトンを見殺しにし、スタン・タンコックに口止め料を支払った。しかし、その金は盗まれたと警察に届出る。タンコックが逮捕されて刑務所に入ったら、アーサー・クリフトンに関して誰も彼の話に本気で耳を貸す者がいなくなることを狙ってのことだった。
ヒューゴーは色盲で、ジャイルズも色盲だったが、ハリーも色盲であることを知る。危機感を抱いたヒューゴは、元警官デレク・ミッチェルを密偵として使い、メイジーの行動を報告させることにする。
ジャイルズの誕生日に、ハリーの誕生日の方が先だとヒューゴーは知る。このことは、ハリー・クリフトンがバリントン家の財産を相続する可能性があるということだった。ヒューゴーは、ロイヤルホテルに赴き、メイジーが客と寝ていると支配人に告げ、解雇を約束させる。

〇オールド・ジャック・ター 1925年-1936年
オールド・ジャックことジャック・タラント大尉は、南アフリカで部隊を救った。その中にはジャイルズの祖父ウォルター・バリントンもいた。この殺人のショックで、心を病んだタラントは、軍を離れ、名を変えブリストルに向かった。そこでウォルター・バリントンと出会い、住居と港の夜警の仕事を得た。オールド・ジャックはハリーの父親アーサー・クリフトンがいなくなった事件の一部始終を見ていた。オールド・ジャックは、ハリーのために様々な手助けを行った。

〇ジャイルズ・バリントン 1936年-1938年 
ジャイルズは、わざとイートン校を不合格になり、ブリストル・グラマー・スクールに行くことになった。最終学年前の休暇で、ローマでハリーと会うために、ジャイルズは妹のエマと共に赴く。しかし落ち合ったヴィラ・ボルゲーゼでツアーガイドに恋をし、彼女とのデートの間、妹のエマの面倒をハリーに見てもらう。
1937年のブリストル・グラマー・スクールの演劇祭で「ロミオとジュリエット」をハリーとエマは演ずる。二人は恋に落ちていた。観劇の際に途中退場したヒューゴーの態度に怒った妻のエリザベスとエマは、家を出てしまい、ジャイルズとハリーはエリザベスとエマの居場所を知っていそうなオールド・ジャックに会うためにロンドンに向かう。エリザベスの父ハーヴェイ卿のスコットランドの別荘でエリザベス、エマと再会する。ハリーとエマが愛し合っていることは誰の目にもあきらかで、このことに反対しているのはヒューゴーだけだった。
家族にヒューゴーは謝罪するが、ハリーに対する態度の理由については、その父アーサーの死の責任を感じているからとだけ言う。ハリーたちはブリストル・グラマー・スクールを卒業した。ハリーはオックスフォードの給費生として迎えられた。ハリーが母に報告しようとロイヤルホテルに行くと、母はそこで働いておらず、エディ・アトキンズのナイトクラブで勤めていることがわかる。

〇エマ・バリントン 1932年-1939年
エマは、ジャイルズの誕生日のお茶会のときからずっとハリーを意識していた。しかし、ハリーに取ってはローマでの出会いが最初のようだった。そのローマでエマとハリーは初めてデートし、それから頻繁に会うようになった。
ハリーのオックスフォード合否を知るために落ち合うと、ハリーはショックを受けた様子で、母が売春婦だったとエマに告げ、それがヒューゴーから避けられる理由だというが、エマはヒューゴーから聞いた、ハリーの父アーサーの死とヒューゴーの関係を話す。
ジャイルズもオックスフォードに合格し、三人の親友のオックスフォード生活が始まった。
エマもオックスフォードに入るべく、懸命に勉強する。ハリーの1年目の終わりにオックスフォードの舞踏会に招待されたエマは、その夜ハリーと結ばれ、ハリーはエマにプロポーズする。エマはジャイルズの十二歳の誕生パーティから決めていたと承諾する。
結婚式の日、エマにオックスフォード合格の通知が届く。そして、結婚式のさなか、ジャック・タラントが異議を申し立て、両家の親族が集まった中、ハリーとエマの父親が共にヒューゴー・バリントンである可能性を指摘する。ハリーが色盲であることも、バリントン家の血筋である可能性を疑わせた。式場を出たエマは、生まれてくる子に父親は誰かと訊かれた何と答えることになるか心配するのであった。

〇ハリー・クリフトン 1939年-1940年
結婚式は中止になり、ジャイルズと共に学寮に戻ったハリーは、ジャイルズの異母兄であり一族の財産の相続者である可能性を知る。多くの人々の運命を変えることになった結婚式の中止だった。エマはハリーの元を去ったが永遠の愛を誓い、異議を申し立てたオールド・ジャックは、ブリストルの港の客車でビクトリア十字勲章をつけて死んでいた。
ハリーは、ウォルター・バリントンからオールド・ジャックと一緒に従軍していたことを知る。ハリーは、ウォルターの協力を得て、本格的な軍艦に乗る前の訓練のため、見習い航海士として老朽貨物船「デヴォニアン」に乗り込む。ハリーは順調に船の仕事をおぼえていった。しかし、その間に英独が戦争に突入し、デヴォニアンはUボートの魚雷攻撃を受け、ハリーは機関室の救難活動中に閉じ込められてしまう。
ハリーは生き残り、アメリカ船「カンザス・スター」に救助された。共に救助された三等航海士のトム・ブラッドショーが死んだとき、とっさの決断で彼になりすまし、死んだ彼がハリー・クリフトンとすることにする。このことで多くの問題が片付くと思ったからだ。母には密かに真相を手紙にした。
ニューヨークに着いて、カンザス・スターから下船したハリーは移民局に出頭したハリーは直ちに逮捕された。トム・ブラッドショーには第一級殺人罪の容疑がかかっていたのだ。



第2部 「死もまた我等なり」
〇ハリー・クリフトン 1939年-1941年
逮捕されたハリーは、自分はトム・ブラッドショーではなく、ハリー・クリフトンであると主張するがコロウスキー刑事は聞き入れない。一方、弁護士セフトン・ジェルクスはそれをわかった上で、ブラッドショーの両親の意向から、司法取引によりハリーが軍からの脱走罪を認めることを提案する。メイジーに送られる1万ドルの報酬もあり、ハリーは受け入れたが、想定していた1年ではなく、6年の刑期を言い渡される。
ハリーは刑務所にいる間に起こることのすべてを日記に記すことにする。図書室の仕事を得て、面白い逸話に出会うと忘れず日記に書き付けた。

〇エマ・バリントン 1939年-1941年
エマはスコットランドの祖父の屋敷でハリーの息子を産み、セバスティアンと名づけた。オックスフォード大学はやめなくてはならなかったが、エマの妹のグレイスはケンブリッジ大学に入った。メイジーを訪れ、トム・ブラッドショーからの手紙を見つけ、読もうとするが断られる。エマはその死が知らされていたにも関わらず、この手紙はハリーが書いたものと確信する。
エマはグランド・ホテルのメイジーのところでひと月ウェイトレスの見習いをし、紹介状を持ってアメリカ行きのトム・ブラッドショーが助けられた「カンザス・スター」に乗り込み、案内係の仕事をしながら、ハリーとトム・ブラッドショーを助けた時の様子を知る。
エマはアメリカに上陸し、クリスティンを尋ねる。そこでトム・ブラッドショーが逮捕されたことを聞いて、トム・ブラッドショーがハリーなら誤認逮捕と証明するのは難しくなかったずだと、ハリーの死を受け入れようとする。

〇ジャイルズ・バリントン 1939年-1941年 
ジャイルズはジャック・タラントが所属していたロイヤル・グロスター連隊へ入隊しようとするが、色盲が原因で実戦任務には不適とされる。
非難の目にさらされたジャイルズは、改めて、ウェセックス連隊に色盲のことは隠して入隊する。12週間の訓練中は、バリントン家出入りの肉屋の息子テリー・ベイツが良いライバルだった。しかし、ジャイルズは、士官養成学校に進み少尉となる。
そしてジャイルズの連隊は海外に出動することになった。

〇ハリー・クリフトン 1941年 
図書係のマックス・ロイドが出所したとき、読み続けたいのでハリーの日記を送るように頼まれ、同意する。
真珠湾攻撃の後アメリカが参戦し、ハリーは軍のレンジャーズにリクルートされ、パット・クウィンとともに入隊し、ハリー・クリフトンの名前を使うことにする。

〇エマ・バリントン 1941年
エマは、クリスティンのアパートでアメリカ上陸時のトム・ブラッドショーの写真を見せられ、それがハリーであることを知る。ではなぜハリーは別人として服役しているのか?エマは弁護士のセフトン・ジェルクスに面会を求めるが拒絶される。
裁判記録を調べたエマは、トム・ブラッドショーを逮捕した二十四分署のカール・コロウスキー刑事にトムはハリーだと説明し、レーヴェンハム刑務所に入所しているトムことハリーと面会する手続をとってもらうが、トム・ブラッドショーは誰とも会いたくないと明言しているとのことでかなわなかった。
エマは、マックス・ロイド著「ある囚人の日記」が大ベストセラーになっているのを発見する。

〇ジャイルズ・バリントン 1941年 
ジャイルズの連隊はエジプト・トブルクに到着した。ジャイルズの上官はセント・ビーズの監督生であったフィッシャー中尉で、相変わらず偉そうなろくでなしのようだった。
任務は町の哨戒だったが、何事も無く何週間が過ぎた四月初め、ドイツ軍と戦闘になった。ジャイルズの隊はフィッシャーの命令により無理な突撃を強いられ、多くの犠牲者を出すがドイツ軍を撃退する。しかし、フィッシャーに手柄を奪われる。
沙漠の狐ロンメルの本格的な攻撃が始まり、ジャイルズは圧倒的に不利な状況を持ちこたえるようフィッシャーに命令される。そして、砲撃により四方の壁が崩れはじめ、ジャイルズはベイツ伍長に覆い被さった。

〇エマ・バリントン 1941年
「ある囚人の日記」を読んだエマは、これがハリーの作と確信する。ロンドンから来たリテラリー・エージェントのふりをして、マックス・ロイドを食事に招待し、対決する。マックス・ロイドは日記の作者ではないことを指摘した上で、出版権を外国に売らないこと、日記をすべて引き渡すことを求めたのだ。
しかし、翌日セフトン・ジェルクス弁護士のオフィスであったときに、反撃を受ける。ジェルクスがマックスの代理人であり、またマックスの筆跡のオリジナル原稿もあったのだ。エマは日記の作者がハリーであること、名誉毀損のかどでエマを告発するのであれば、トム・ブラッドショーが本人でないとわかっているのに弁護した理由を法廷で説明しなければならなくなると釘を刺す。
もうエマが頼りにできるのは、ハーヴェイ卿の妹である大叔母のフィリスだけだった。

〇ジャイルズ・バリントン 1941年
ジャイルズは負傷して捕虜になり、ドイツのヴァインベルク捕虜収容所に送られた。ジャイルズは脱走委員会の待機リストの上位に上がるため、テリー・ベイツ伍長の協力を得て元ワイン・ウェイターのふりをすると同時にドイツ語の学習をはじめる。ワイン・ウェイターとして働きはじめると、ジャイルズは捕虜収容所長に第一級のワイン・ウェイターだと気に入られ、常に所長に給仕し、所長のしゃべり方を会得する。
ついに1941年の大晦日の日、テリーとジャイルズは、新年を祝うにぎわいにまぎれて所長のふりをして収容所を抜け出す計画を実行する。スイスとの国境の検問所で正体がばれ、銃撃を受けるがジャイルズはなんとかスイスにたどり着く。しかし、テリー・ベイツは銃弾に倒れていた。

〇ヒューゴー・バリントン 1939年-1942年
結婚式が中止になった後、困窮しながらロンドンに隠れ住んでいたヒューゴー・バリントンは、ポーランドからの亡命ユダヤ人オルガ・ペトロフスカを知った。結婚とレディ・バリントンの地位をちらつかせて財産目当てでねんごろになり、彼女と共に暮らしはじめる。旧友トビー・ダンステイブルと共謀してオルガの財産を盗み1万ポンドの分け前を得る。
そしてウォルター・バリントンの死を知る。ヒューゴーが唯一の相続者だった。

〇メイジー・クリフトン 1939年-1942年
グランド・ホテルのレストラン部門の部長になったメイジーは、相談したホールコムから、逆に夜間学級への就学を勧められる。金を要求するスタンがやってきて彼女を連れ出そうとするが、ホールコムがボクシングで撃退し、彼の家に泊まるよう勧める。

〇エマ・バリントン 1941年-1942年
エマは大叔母のフィリスに客として迎えられる。その息子で弁護士のアリステア・スチュアートの助言を受け、「ある囚人の日記」の出版社のハロルド・ギンズバーグと面会し、日記がハリーの作であると説得し、ギンズバーグはハリーを著者にした改訂版の出版を約束する。
ハリーことトム・ブラッドショーへの面会許可を求めたが、もう刑務所にいないという理由で却下された。ハリーはその刑期を海軍で消化しているのだ。

〇ヒューゴー・バリントン 1942年-1943年
ウォルター・バリントンの葬儀が行われ、ヒューゴーも参列する。既に准男爵の地位とバリントン海運会長の座を相続していた。ヒューゴーは、スタンを使って、メイジーの元にあるトム・ブラッドショーからの手紙を読もうとする。密偵ミッチェルの報告で、メイジーがホールコムと婚約したことをヒューゴーは知る。ミッチェルには、オルガ・ペトロフスカの監視を命ずる。
気まぐれな経営でバリントン海運の雲行きを怪しくし、ヒューゴーは、自身の金回りも悪くなり、さらにトビー・ダンステイブルの逮捕、オルガ・ペトロフスカからの婚約不履行と娘の認知の訴訟でヒューゴは追い詰められ、バリントン・ホールを売却しアメリカへの脱出を試みるが逮捕される。絶体絶命かと思われたが、トビー・ダンステイブルの死で釈放される。
さらに、政府との有利な契約、ブロード・ストリートの土地の高額での売却でヒューゴは息をつく。しかし、手に入れたトム・ブラッドショーからの手紙で、ハリーが生きていることを知る。
オルガ・ペトロフスカが会社に乗り込んできて娘の認知を迫る。もみ合いになって、オルガの持ったレター・オープナーがヒューゴーの首を貫き、ヒューゴは死ぬ。オルガは急行列車に飛び込む。

〇エマ・バリントン 1942年
エマは、出版社主ギンズバーグと共に弁護士セフトン・ジェルクスと対決し、見事な演技で実は有利な契約を結ぶことに成功し、著者をハリーに改訂して出版された「ある囚人の日記」はベストセラーになった。
ジョン・クレヴァードン大佐からハリーの情報を知らせることができるという手紙が届き、また、大使と共に飛行機でロンドンへ戻る方策もついた。イギリス大使館で帰国の手続をした後は、ジョン・クレヴァードン大佐と面談しハリーの詳しい消息を聞く。今は特殊部隊の中尉となり、敵の前線の後方で破壊工作に従事し、賞金首とまでなっているとのことだった。釈放の期日を聞くが、刑期は終わったことになっていないという。エマは無実とわかったのだから、ハリーをイギリスに送り返してほしいと望む。

〇ハリー・クリフトン 1945年
ハリーは、ドイツ軍のケルテル元帥をハンカチ一枚を武器に騙し、伝説の第一九機甲師団を降伏させる。しかし、その直後ハリーのジープはドイツ軍の地雷を踏む。
ハリーが気がつくとそこはブリストル総合病院で、エマがいた。セバスティアンとも対面し、その風貌がアーサー・クリフトンとそっくりなことに気がつく。母メイジーは、ホテルの副支配人になっており、ホールコムと結婚していた。ジャイルズは労働党から国会を目指す予定。
やがてハリーはウィリアム・ウォーウィックを主人公とする探偵小説を書き始める。
退院の日、ヒューゴーの死の後、バリントン一族の所有する会社とハーヴェイ一族の所有する会社は一つにまとめられたが、その肩書きと資産を引き継ぐ者の判定は、大法官に委ねられ、法官議員の評決ではハリーに有利な評決になったことを教えられた。これを覆すには貴族院に上訴しなければならない。今やこの相続は世論を二分する話題だった。
大法務官執務室から連絡があり、9月6日に議会で討論が行われ、ハリーとジャイルズのいずれかが一族の肩書きを継承するか決せられることになった。ハリーの小説は7月20日に出版され、批評家に好意的に迎えられたが、世間の関心は相続の行方だった。庶民院に議席を得たジャイルズも、自分とハリーの将来を決めるのは貴族院で行われる討議と承知していた。
いよいよ貴族院の討議の日、エマは、ミッチェルと会ってヒューゴーの遺児の名がジェシカだと知る。ハーヴェイ卿の演説の後、討議を経て投票となったが、賛否同数だった。ハーヴェイ卿は急病で倒れ投票できなかった。大法官が決定票を持っているが、その判断は午前10時に下されることとなった。



第3部 「裁きの鐘は」

〇プロローグ
大法官は、亡くなったハーヴェイ卿が投票していれば問題は落着していたはずと思いながら、ハリーとジャイルズのいずれかに相続させるべきか悩んでいた。午前10時になり、貴族院の議場でついにジャイルズを相続者とすると発表したが、実は最後の瞬間に考えを変えたのだった。

〇ハリー・クリフトンとエマ・バリントン 1945年-1951年
ハリーとエマはついに結婚した。夫妻は落ち着きの無いセバスティアンのために、ヒューゴーの遺児を養子を迎えることにし、ジェシカを養子とすることができた。
ハリーは新作の宣伝ツアーでアメリカに行く。ギンズバーグ、フィリス、アリステアと会い、本の名前を売らなければならない宣伝ツアーはなかなかハリー意のままにならなかったが、なんとか成果を上げて終了した。
サイラス・フェルドマン教授の講演を聴講したエマは、教授の知己を得、ロンドンに戻る教授にバリントン海運の将来についてアドバイスを受け、海運の重役になるため彼の通信教育を受けることにする。
セバスティアンはセント・ビーズに入学した。しかし、成績と、父親の本を書店で勝手に配るという万引き事件をフィッシャー理事長が問題にしたためブリストル・グラマー・スクールへの入学はかなわなかった。
エリザベス・バリントンは乳癌で死に瀕していた。ハリーは相続に関して、ジャイルズの女友達ヴァージニア・フェンウィックを遠ざけるための手紙を預かる。

〇ジャイルズ・バリントン 1951年-1954年
エリザベス・バリントンは51歳で亡くなり、葬儀が盛大に行われた。その後の通夜でヴァージニア・フェンウィックは高慢かつ我が物顔に振る舞い、グランド・ホテルの総支配人に昇格したハリーの母メイジーをはじめ、多くの人間に不快感を抱かせる。その後のディナーでジャイルズは彼女との結婚を発表する。
議会が解散され、ジャイルズの選挙戦が始まった。それは地道な草の根の闘いだった。ジャイルズは薄氷を踏む勝利を得たが、労働党は敗れた。
母エリザベスの遺言書が公開され、ジャイルズは何も相続できず、ヴァージニア・フェンウィックとの結婚への反対の言葉だけが残された。ジャイルズとヴァージニアは結婚したが、ハリーやエマをはじめとするバリントン家の者は結婚式に招かれなかった。
エリザベスの遺言書に対する異議申し立ての審判が行われる。死に瀕したエリザベスが遺言書を理解して署名したのか争われるが、ハリーに託されたエリザベスの手紙により、遺言書を作成した当時のエリザベスの能力が証明され、ジャイルズは敗れる。
ヴァージニアがジャイルズの元を離れて一年以上が過ぎたが、彼らはまだ離婚していなかった。ジャイルズの元に妹のグレイスがやってきて、彼女の30歳の誕生パーティに誘う。そこでジャイルズは魅力的な博士課程の女学生グウィネッズ・ヒューズと出会う。ヴァージニアから離婚の申し出がありジャイルズはある手続を行う。それは離婚の根拠となる不倫の偽装だった。

〇アレックス・フィッシャー 1954年-1955年
ヴァージニアは、フィッシャーと共謀してジャイルズを叩き潰そうと試みる。まず、バリントン海運の株の7.5%を所有し、フィッシャーを重役に送り込んだ。そして、グウィネッズ・ヒューズとの関係を噂として流した。
バリントン海運の重役であるフィッシャーは、インサイダー取引をバージニアに持ちかける。一方で、保守党候補に自分たちに都合の良い人間が選出されるよう不正を働く。またフィッシャーは選挙区支部長に就任した。
フィッシャーのインサイダー取引に会社は気付き、反撃に出ようとする。偽の情報をフィッシャーに流すのだ。
フィッシャーは、先に保守党候補として選出された人間のスキャンダルをつかみ、辞退に追い込む。代わってフィッシャーが保守党候補になる。

〇ジャイルズ・バリントン 1955年 
フィッシャーが保守党候補になったと知って、エマとハリーは労働党員になり、ジャイルズの選挙戦のボランディアを勤める。フィッシャーは、選挙討論会を申し込み、ジャイルズはこれを受ける。しかし、討論会ではフィッシャーの卑劣な作戦によって貶めるられる。
偽のインサイダー情報にフィッシャーたちは引っかかり、良好な経営見通しがバリントン海運の株主総会で語られるが、その直前に香港経由で株が売られていた。株価は上がり続け、フィッシャーがバリントン海運の重役ではなくなるにもかかわらず、ヴァージニアは買い戻す気が無くなった。
選挙は激戦となり、開票所では不正もあったがセバスティアンが見抜き、僅差でジャイルズが勝った。

〇セバスティアン・クリフトン 1955年-1957年
ヴァージニアが離婚書類にサインして、ジャイルズは自由の身となった。
総選挙に立候補した伯父の手伝いをしたいからと休暇を取った、ビーチクロフト・アビーへ戻ったセバスティアンは、別人のように猛勉強をし好成績を収め、ケンブリッジ大学の奨学生になるための特別選抜グループに加えられた。
食堂のメイドとの逢瀬等の悪行のため、セバスティアンはケンブリッジ大学に進めなくなる退学処分については執行猶予となったが、学年が終わるまであと4日のところで停学となり、家に帰らせられる。友人のブルーノ・マルティネスのことは辛うじてかばった。家では無くロンドンに行こうと列車に乗り喫煙しているところを校長のドクター・バンクスーウィリアムズに見られ、執行猶予の撤回は免れ得ないと覚悟しロンドンに降り立つ。実はケンブリッジ大学の奨学生になれたおかげで退学処分にはならなかったのだが、ジャイルズは退学になったと思い込んでいた。
ミセス・ティベットのゲストハウスにセバスティアンは落ち着くが、持っていた金が無くなっていた。すべての事情をミセス・ティベットに打ち明け、実家に帰れとアドバイスされるが、その夜は泊めてもらう。翌朝から、得意の語学力活かした接客などゲストハウスを手伝う。
ブルーノ・マルティネスの実家を訪れると、その父ドン・ペドロ・マルティネスから息子をかばったことを感謝され、百ポンドの仕事の申し出があった。それはドン・ペドロと一緒にブエノスアイレスへ行き、その後荷物と一緒に船で帰ってくると言う簡単なものだった。
そのころ、ミセス・ティベットは国会のジャイルズと連絡を取る。ジャイルズはセバスティアンを追いかけるが、船は出港してしまう。

〇ハリー・クリフトン 1957年
エマはスタンフォード大学商学部を卒業した。ハリーの母メイジーも文学士の称号を得ていた。スタンフォード大での卒業式から帰るとセバスティアンがまだ帰宅していない。ジャイルズからの報告でブエノスアイレスに向かっていることがわかるが、ハリー、エマ、ジャイルズは内閣官房長官のサー・アラン・レドメインに呼ばれる。
サー・アランから、ドン・ペドロ・マルティネスが政府の監視下にある犯罪者で、ナチが作った大量の5ポンド札の偽札をイギリス持ち込もうとし、セバスティアンがそれに関わっていると説明を受ける。
ドン・ペドロに偽札持ち込みを阻止するための作戦への協力を求められ、ハリーは別人に成りすましてアルゼンチンに飛ぶ。イギリス大使と会い、大使館主催のマーガレット王女の訪問パーティにドン・ペドロ・マルティネスを招待し、セバスティアンと連絡を取る作戦を実行する。

〇セバスティアン・クリフトン 1957年 
セバスティアンはドン・ペドロから前払いを受けた金でブエノスアイレスを堪能する。娼婦とではあったが初体験も済ませた。
パスポートの不備を名目にイギリス大使に呼ばれ、共にイギリスに渡る積み荷が銅像「考える人」であることを伝える。大使は暗号でこのことをイギリスに知らせ、ドン・ペドロが偽札を銅像に入れて持ち込もうといていることが判明する。
像を載せた船がサウサンプトンに到着し、銅像は荷下ろしされた。サザビーズのヴァンの到着を遅らせて、その間にブライアン・スコット=ホプキンス大佐以下の陸軍特殊空挺部隊チームが密かに銅像の偽札を取り出し焼却処分にする。そのまま銅像はサザビーズに運ばれた。
偽札がまだ銅像の中にあると信じているドン・ペドロは、サザビーズのオークションで12万ポンドで銅像を落札する。銅像を開けたドン・ペドロは偽札が無くなっていることを知り、復讐を誓う。
ドン・ペドロは、ハリーがブエノスアイレスにいてセバスティアンと通じていた可能性があることを知る。標的はクリフトン一族とバリントン一族と定まった。アレックス・フィッシャーがドン・ペドロの陣営に加わる。
セバスティアンはブルーノ・マルティネスにウィンブルドンの観戦を誘われ、ケンブリッジで担当教官と面談する前にロンドンに出る。ケンブリッジにはブルーノのとその車で向かうが、ドン・ペドロの仕組んだ事故により一人が死ぬ。



第4部 「追風に帆を上げよ」

〇プロローグ
セバスティアンが運転する車は3台のトラックにはさまれそうになり、対向車線を横切り野原に逃げようとするが、大木が眼前に迫る。

〇ハリーとエマ 1957年-1958年 
ハリーとエマの元にセバスティアンが交通事故で死んだとの知らせがあったが、セバスティアンは大けがをしながらも生きていた。死んだのは、セバスティアンの車に同乗していたドン・ペドロ・マルティネスの息子ブルーノだった。怒るドン・ペドロは、病床にあるセバスティアンを殺そうと計画するが、サー・アランの手配によって阻止される。
バリントン海運の重役に就任しているエマは、豪華客船の建造には反対の立場を取る。ドン・ペドロがフィッシャーを重役会に送り込もうとしているとエマは考える。
セバスティアンは順調に回復しエマにアドバイスを与えるまでになる。グレイスと会ったエマは、フィッシャーがエマのレッド・メイズの後輩でモデルのスージー・ランプトンと結婚することを知る。一方、ジャイルズは、グウィネッズ・ヒューズと結婚する。
フィッシャーが加わったバリントン海運の重役会で豪華客船の建造に関する投票が行われる。採決では、フィッシャーがキャスティングヴォートを握る。

〇ドン・ペドロ・マルティネス 1958年-1959年
重役会の投票では一票差で豪華客船の建造を推進することに決まった。ドン・ペドロはフィッシャーの情報でベルファストのハーランド・アンド・ウォルフが建造すると知る。ドン・ペドロは、手下の元ナチのカール・ルンズドルフにアイルランド共和国軍に接触させる。彼らの手で豪華客船の建設を妨害するのだ。一方で、二人目の重役を送り込むためバリントン海運の株を買い集める。
豪華客船の建造は遅れ、エマはフィッシャーとドン・ペドロが関与していると確信する。さらなる妨害工作が行われ、豪華客船の建造が遅れ、ブキャナン会長は辞任を表明する。ドン・ペドロはフィッシャーを後任会長の座に据えようともくろみ、株を22.5%まで買い、ピーター・メイナードとフィッシャーの妻のスーザン・フィッシャーの2人をを新たな重役として送り込む。さらに、ヴァージニア・フェンウィックを味方に引き込み、重役とする。
エマ側もジャイルズとグレイスを重役とする。さらにファージングズ銀行からセドリック・ハードキャッスルが重役に加わった重役会で会長の選出が行われた。意外なことにスーザン・フィッシャーがエマを支持したことにより、エマが会長に就任する。

〇セドリック・ハードキャッスル 1959年
セドリック・ハードキャッスルはファージングズ銀行の会長で、交通事故で入院している時にセバスティアンと同室になった。そのため事情を知り、バリントン海運の重役になるため株を買ったのだった。
セバスティアンはケンブリッジ大学の奨学生が始まるまでの休暇期間中セドリックの専属アシスタントとしてファージングズ銀行で働く。日本のソニーとの取引に当たって、猛勉強で日本語を習得し、機転を利かせてセドリックを助け、契約が結ばれることになった。ソニーの盛田は銀行こそがセバスティアンの天職と話す。

〇ジャイルズ・バリントン 1963年
ジャイルズは労働党首を目指す。銀行の休暇を取りやめたセバスティアンが協力する。ブリュッセルの欧州経済協力体での演説を成功裡に終えるが、欧州経済協力体副議長のピエール・ブシャールをよそおったドン・ペドロの一党に一服盛られ、心臓発作の症状となりチャンスを逃す。

〇ジェシカ・クリフトン 1964年
ジェシカの才能は抽象画と進み、クライヴ・ビンガムという同級のボーイフレンドがいた。
スレイド・スクール・オヴ・ファイン・アートの卒業制作展示会が行われ、ジェシカは素描、水彩、油彩のカテゴリーすべてで1位となる。ロイヤル・アカデミー・スクールズ大学院へも合格し、画商ジュリアン・アグニューにも認められた。
クライヴは、ジェシカに結婚を申し込む許可をハリーに求める。ハリーは、ジェシカに真実を話す時が来たと考える。ハリーが真相を話す前にジェシカはクライヴの実家の広壮な屋敷に招待され、その父ボブ、母プリシラと対面し、クライヴのプロポーズを受け入れる。しかし、ヴァージニア・フェンウィックが自分の出生の秘密と一族のスキャンダラスな事実をプリシラに話しているのを耳にし、屋敷を飛び出す。
その間、何者かがその父親の指示でアパートにあるジェシカの絵をナイフで切り裂いていた。アパートに戻ったジェシカは、切り裂かれた自分の絵を見て自殺する。

〇セドリック・ハードキャッスル 1964年
セドリック・ハードキャッスルは、その息子の法廷弁護士アーノルドと作ったペドロ・マルチネスとその家族の壊滅計画への協力をバリントン家とクリフトン家に求める。それは彼らが一度も会ったことがなく、しかしペドロ・マルティネスを法廷に引きずり出したいと望んでいる者を見つける必要があった。ジャイルズがこの条件にかなう者を知っていた。それはボブ・ピンガムだった。

〇アレックス・フィッシャー少佐 1964年
ジェシカの絵を切り裂いたのはドン・ペドロの差し金だった。
困窮するアレックス・フィッシャー少佐は、ヴァージニア・フェンウィックから五百ポンドで仕事を請け負う。それは、バースの店頭のビンガム・フィッシュ・ペーストにガラス片を入れ、スキャンダルにすることだった。
バリントン海運の重役会に出席したフィッシャー少佐は、豪華客船バッキンガムの命名式と処女航海の日取りをドン・ペドロに報告する。ドン・ペドロは五千ポンドの報酬でフィッシャー少佐に年次総会の三日前の8月21日に重役辞任の手紙を明らかにすることを求める。株価の下落を狙ってのことだが、自らはその前の8月17日に株を売り払う手配をする。フィッシャー少佐の別れた妻のスーザンがたまたま辞表を目にするが、日付の意味は理解できない。
セバスティアンは、展示画廊アグニュー美術商会で、スレイドの卒業展示会の夜に会った美女と再会する。ジェシカの絵を全財産をはたいて買い、美女ミス・サリバンとデートの約束を取り付ける。そして、店にドン・ペドロの「考える人」があるのを発見する。
セドリックは、ドン・ペドロが自分の美術品を売りたがる理由を知るため、ドン・ペドロの取引銀行であるミッドランド銀行のスティーブン・レドベリーと連絡を取り、ドン・ペドロがバリントン海運の年次総会の1週間前に株を売却しようとしていることを知る。美術品を売る理由はまだわからない。
スーザンはレッド・メイズの同窓会で会ったエマに、フィッシャー少佐の辞表について教える。セバスティアンは画廊の美女サマンサ・サリバンと初めてデートする。

〇セバスティアン・クリフトン 1964年
バリントン、クリフトン家とハードキャッスル親子は、ドン・ペドロのバリントン海運株への攻撃に対する防御態勢を整える。
ドン・ペドロ一味は、株を売却する時にはスコットランドに雷鳥猟を行ってメディア等を遠ざけるつもりだが、ディエゴ・マルティネスが株を売却する予定である月曜日の前の金曜日まで株価を監視することにする。
セバスティアンは、サマンサと共謀して高額な名画を盗んだ容疑をかけられるが冤罪で、サマンサはセバスティアンを両親に自分と結婚する人として紹介する。
セドリックは、ドン・ペドロの裏をかいて、海外市場で月曜日までの間に株を放出した。ディエゴは、金曜日の晩にスコットランドのドン・ペドロ一味に合流する。しかし、何事かに気がついたディエゴは日曜日の夕方にスコットランドを離れロンドンに向かう。彼らを監視していたロス・ブキャナンは、ディエゴと同じ列車に乗り込み、列車が翌月曜日の朝9時までロンドンに着かないよう工作する。しかしディエゴは9時前に列車を飛び出した。
セドリックは、予定どおり月曜日の9時にドン・ペドロが売った120万株を買い取る。

〇ディエゴ・マルティネス 1964年
ディエゴは8時53分に列車から飛び降りた。仲買人のデイヴィッド・アレグザンダーとようやく電話が通じた時にはすでに株は売られており、デイヴィッドを脅しても取引を取り消すことはできなかった。
ドン・ペドロは、アグニューの画廊で自分のコレクションの売却益を受け取ろうとするが、ミッドランド銀行が差し押さえていた。
内閣官房長官サー・アランは、ナチハンターのサイモン・ウィーゼンタールにカール・ルンズドルフの情報を流す。スコット=ホプキンス大佐のチームが、ルンズドルフを確保しイスラエルに送った。ドン・ペドロの二人の息子ディエゴとルイスが逮捕されたが、あっさりと保釈が認められる。
フィッシャー少佐は、辞表を出すのをやめ重役会に留まろうとするが、逆にドン・ペドロが株を手放したことから辞任をやむなくされる。
ドン・ペドロは、二人の息子をアルゼンチンに逃がした後で、スコット=ホプキンス大佐に28日以内の退去を迫られ、とあるところに電話する。

〇ハリーとエマ 1964年
エマは年次総会を成功裡に終えた。周到な準備を重ね、皇太后を迎えてのバッキンガムの命名式も無事終えることができた。ドン・ペドロは、アイルランド共和国軍に破壊工作を依頼する。
ジャイルズは選挙戦を勝ち抜き、労働党政権のもと、ヨーロッパ問題担当国務大臣に就眠した。息子ウォルターが誕生していた。
いよいよ処女航海出港の日が来た。スコット=ホプキンス大佐のチームが乗船して密かに警戒する。
マッキンタイヤ卿なる人物が「バッキンガム」処女航海の客室をエマ、ジャイルズの部屋の隣りに予約していたが、彼はアイルランド共和国軍の破壊工作員だった。
エマにエリザベス皇太后から百合の花瓶が届くが、花の下の土にはアイルランド共和国軍により6ポンドのダイナマイトが仕掛けられていた。
午前3時に30分の遠隔時限装置をセットしたマッキンタイヤ卿ことリーアム・ドハティは、変装を解いて下層のキャビンクラスに向かう。そして、轟音とともに激しい衝撃が襲ってきた。



第5部 「剣より強し」

〇プロローグ
アイルランド共和国軍は、豪華客船「バッキンガム」の処女航海で時限爆弾を仕掛け、時間になると轟音がともに激しい衝撃が襲ってきた。

〇ハリーとエマ 1964年-1965年
皇太后から送られた百合の花に添えられたカードの誤りにハリーが気がつく。スコット=ホプキンス大佐のチームにより遠隔時限装置が発見され、爆弾の入った百合の花瓶を舷側から海に投棄する。爆弾は海中で爆発した。
ドン・ペドロはアイルランド共和国軍に2回目の報酬を払わずに逃げようとするが、捕らえられる。バッキンガムの爆破が失敗したこととで殺されることは免れたが、アルゼンチンに帰るしか選択肢は無かった。
バッキンガムで重役会が行われ、爆破事件への対応が協議される。絶対に秘密にされなければならなかった。ジャイルズが大臣になったことから重役会を辞任し、代わってセバスティアンが重役に選ばれる。バッキンガムは無事ニューヨークへ入港し、エイヴォンマスへの帰路についた。船上での2回目の重役会にセバスティアンは出席し、歓迎されるが、ブリストル・バス会社創設者のデズモンド・メラーが重役候補として推薦される。
ハリーはイギリス・ペン・クラブ会長としてモスクワを訪れ、世界書籍会議でアナートリイ・ババコフがスターリンについて書いた「アンクル・ジョー」の出版が認められるべきだとする基調演説を行う。サー・アラン内閣官房長官からの依頼で、イギリス大使と会い、ソビエトのスパイリストを記憶して持ち帰る。
不動産部門次席のセバスティアンは、上司のスローンの不正な秘密取引をつきとめる。余罪も明らかになったスローンはセドリックによって解雇されるところだったが、セドリックは持病の発作に倒れ死ぬ。スローンは倒れたセドリックを見殺しにした。
セドリックの葬儀の日に開かれたセバスティアン不在の重役会で、スローンはファージングズ銀行の会長に選ばれる。セバスティアンは、級友ヴィクター・コーフマンの父親が経営する銀行の手でスローンが手がけていた取引を横取りする。3カ月後、この取引で手に入れた土地に政府が高速道路を計画していることを発表し、取引の成功が明らかになる。セバスティアンには4万ポンドのボーナスが出ることに。
だが、セバスティアンは、この取引の情報提供者モーリス・スワンに約束していた学校に新しい劇場を作るための寄附をしなかった。これを責められサマンサから別れを告げられる。

〇レディ・ヴァージニア・フェンウィック 1966年
レディ・ヴァージニア・フェンウィックは、ボブ・ピンガムを追い落とすため、フィッシャー少佐を雇いピンガムの財産を調べさせる。
一方で、プリシラをそそのかして、ボブ・ピンガムとの離婚訴訟を起こさせる。プリシラは、財産分与で財産の半分を現金、不動産を受け取ろうとするが、案に相違してボブは会社を彼女に譲る。
プリシラに会社経営ができるはずもなく、フィッシャー少佐が経営を行おうとするが、社員のサボタージュにあい撤退する。結局、プリシラとボブはよりがもどる。
レディ・ヴァージニアの矛先はエマに向かった。レディ・ヴァージニアは、バッキンガムの処女航海の夜の出来事を明らかにしようと考える。

〇ジャイルズ・バリントン 1970年
ジャイルズは50歳になり、息子のウォルターを失い、グウィネッズとの仲も昔のようではなかった。望みは外務大臣の職だが、まずは次の選挙に勝つことだった。
ジャイルズは東ベルリンでの会議に参加し、通訳のカリン・ベンジェリーと関係を持つ。事は露見して、マスコミの好餌となり大臣を辞任するが、議員辞職は首相から慰撫される。
そして、選挙の相手はまたアレックス・フィッシャー少佐となった。先行されるジャイルズは公開討論会で対決し逆転したかに思えたが、11票差でフィッシャー少佐に敗れる。
ジャイルズは東ベルリンに向かうが、アナトーリイ・ババコフを刑務所から釈放するハリーの運動への支持を表明したため、ビザを没収されカリンと再会することはできない。

〇セバスティアン・クリフトン 1970年
セバスティアンはサマンサを失ったことを悔いていた。やり直すために、まずはモーリス・スワンに寄附金を渡す。バッキンガムでアメリカに渡ると、サマンサには娘がいることを知る。しかし、娘はセバスティアンの子だった。セバスティアンはその娘ジェシカの小学校の校長ローズマリー・ウルフ博士から、ジェシカの書いた絵を受け取る。さらに新聞社を訪ねて、3カ月前にサマンサが結婚していたことを知る。
同じ船でアメリカに渡ったハリーは、アナートリイ・ババコフの「アンクル・ジョー」を世に出すべく、亡命したその妻のもとを訪れる。本はレニングラードの古書店に隠されていることを教えられる。

〇レディ・ヴァージニア・フェンウィック 1970年
レディ・ヴァージニア・フェンウィック、デズモンド・メラー、エイドリアン・スローン、そして今や国会議員となったフィッシャー少佐は一味だった。彼らはアーノルド・ハードキャッスルをだまし、母親のファージングズ銀行の株をメラーに売らせた。彼らはその株を外国人に転売するつもりだ。そして第二段はレディ・ヴァージニアとエマの裁判。裁判期間中はエマは会長職を降りるべきだと主張するのだ。そして処女航海で起こったことを明らかにし、株を暴落させたところで手に入れ、我が物とする計画だ。
セバスティアンは、スローンからファージングズ銀行株の買取を持ちかけられるが断る。スローンは重役会に席を得るためには株の10%を保有していなければならないと定款を変えていた。
セバスチャンは、スローンの株買取申し出の理由を探るため、トルコ人の銀行家ハキム・ビシャラの知己を得る。彼らは最古の職業を母と祖母がしていた共通点があった。
バリントン海運の重役会が行われ、デズモンド・メラーが副会長に選任される。セバスティアンは遅刻により投票できなかった。メラーは早速、裁判の間、エマが会長職を降りることを提案する。エマは従うしかなかった。

〇セバスティアン・クリフトン 1970年
エイドリアン・スローンは、ハキム・ビシャラへの銀行売却金額を契約の土壇場でつり上げ、ハキムは断る。
セバスティアンは、ウルフ博士からの電話でサマンサの結婚相手のマイケルが心臓発作をおこし昏睡状態であることを知り、学費の援助を申し出る。
ハリーは「アンクル・ジョー」の本を回収するためソビエトに降り立った。レニングラードの古書店で二都物語に偽装したアナートリイ・ババコフの本を手に入れ飛行機に乗るところで拘束される。自分をMI5の工作員とする供述書にサインすれば釈放されるのだが、拒む。
ハキムはセバスティアンを通じて、株式をハードキャッスル夫人から買い取ったのがメラーで一株当たり3ポンド9シリングと知る。メラーから元値で買い取り、メラーにバリントン海運の重役を辞任させる。ハキムはファージングズ銀行の重役会からスローンを排除し、ロス・ブキャナンを会長に、セバスティアンを副会長にする。

〇ハリーとエマ 1970年
エマ対レディ・ヴァージニアの裁判がはじまった。フィッシャー少佐に対する証人尋問が行われ、フィッシャーは馬脚を現し、地元執行委員会で辞職動議が全会一致で可決されたことで辞職をよぎなくされる。フィッシャーは自殺する。裁判で陪審は膠着し、自殺したフィッシャー少佐からの手紙公開を求める。
ソ連で捕まったハリーは裁判にかけられる。それは世論操作のための裁判で、三文芝居に過ぎないものだった。証人として出廷したアナートリイ・ババコフと同房になる。裁判では有罪となるが、ハリーはソ連が用意した供述書に署名することで解放される。イギリスへ戻る機内で、最初から最後まで諳んじているアナートリイから聞いた「アンクル・ジョー」を筆記し始める。供述書の署名はウィリアム・ウォーウィックのものだった。





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2016年04月21日

タブーの花が咲いてしまった(第8話)

<第8話>


遥「ウフフ。でも私は、kou先輩によく飲みに誘われますよ。今でも。」

咲良「えっ、そうなんだ・・・。仲いいんだね。羨ましいな。」

咲良の本音が出た。

遥「私も、学生時代から先輩とつき合ってた咲良さんのこと、ずっと羨ましかったですよ。」

遥も本音で応える。

咲良「そっか・・・。なんか、不思議だね。」

空になったグラスを見て、お酒を追加で注文する。



遥「咲良さんは、なんでkou先輩と別れたんですか?」

咲良「いろいろあったんだけど、kouの優しさが、頼りなさに感じちゃったの。そんな時に、年上でとても頼りがいのある人に出会って・・・。結局はkouと別れて、その人と結婚してしまったの。」

咲良は覚悟を決めて、全てさらけ出す。

咲良「結局、その人の頼りがいって、うわべだけだったんだけどね。だから、離婚しちゃったの。今思えば、kouの優しさこそが真の強さだったんだけどね。若いから、私には気付くことが出来なかったの。」

遥「そうなんですね・・・。すいません。でも、もう1つだけ聞かせてください。kou先輩と別れて、後悔してますか?」

咲良「後悔してないって言ったら嘘になるけど、後悔してるとも言いたくない。だって、私が選んだ道だからね。私は、この道で幸せをつかまなければいけないんだから。後ろを振り向いても何も生まれないから。」

遥「咲良さん、強いですね。私は、kou先輩のことが好きです。先輩とは男と女の仲になってます。先輩は、結婚してるけど・・・。でも、私は前だけを向いて生きられるほど強くない・・・。」

遥の目が潤んできた。



遥「本当は、今日咲良さんに会って、『絶対に負けたくない!』って強く思いました。kou先輩と仲良くしてることを自慢しようって、だから咲良さんを誘ったんです。ひどい女なんです、私。」

咲良「kouにとっては、私なんかただの昔の女だから、もう関係ないよ。私も強くなんかない。このあいだ鹿児島でkouに会った時、昔に戻っていろいろと甘えちゃったし・・・。それじゃダメだなって思ってる。後悔もしたくないし、過去にもすがりたくない。だから前を向いて生きようって決めてるの。」

少しの沈黙の後、咲良がさらに続ける。

咲良「でもね、もう愛し合うことは出来なくても、それでもね、いつまでもkouの特別な存在でいたいって、今でも思ってる。だから、私もそんなに強くなんかないよ。」

咲良の目も潤んできた。



遥「咲良さんも、特別だって思ってるんですね。私も自分が特別だって思ってます。そして、信じてる。」

咲良「私にとっても、遥ちゃんにとっても、そして奥さんにとっても、彼は特別な存在なんだね。きっと。」

二人は少し沈黙し、店のBGMか聞こえてくる。

流れてくる曲は「Love You Only」



遥「この曲、懐かしい。kou先輩がよく歌ってくれました。」

咲良「私もだよ・・・」



咲良「kouってさ、優しくてとってもいいやつなんだけど、本当はとても悪いやつなのかもしれないね。」

遥「そういえば、同期達もkou先輩は優しいけど、裏の顔がありそうだってみんな言ってました・・・」

咲良「なんであんな男に執着してるんだろうね、わたしたち。」

遥「ホントそうですよね。そんなにカッコイイわけじゃないのに!」

咲良「やっぱりさ、あいつより絶対に幸せにならないとね。」

遥「そうですね。絶対に負けないんだからっ。」

咲良「よし、大人の女子2人でカラオケでも行こうか!」

遥「マイク、離しませんよ!」



ワインを飲みながら、カラオケで盛り上がる2人。



咲良「遥ちゃん、今度kouから連絡来たらどうするの?」

遥「それはもちろん、逢いません!」

咲良「どうしても逢いたいって言われたら?お前だけが特別だって言われたら?」

遥「逢っちゃうかも・・・」

咲良「それじゃダメだよー。幸せに向かわないと。」

遥「咲良さんはどうやって断るんですか?」

咲良「私ならね・・・抱いてもらう。」

遥「全然ダメじゃないですかー」

咲良「難しく考えたってしょうがないの。男と女なんて何が起こるかわからないんだから。彼に身を任せる時も私には必要なのよ。」

遥「そんなのズルいですよー。じゃあ私だって、先輩の特別になるんだから。咲良さんには、絶対に負けないですよ!」

咲良「私たちは、永遠のライバルってことね。」

遥「ウフフっ。」









<第1話はこちら>
咲良がさくとき(鹿児島編)

<第2話はこちら>
咲良がさくとき(岡山編)

<第3話はこちら>
春が来るのはまだ遙か・・・(池袋編)

<第4話はこちら>
春が来るのはまだ遙か・・・(浅草編)

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タブーの花が咲いてしまった(第5話)

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タブーの花が咲いてしまった(第6話)

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タブーの花が咲いてしまった(第7話)



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2016年04月20日

タブーの花が咲いてしまった(第7話)

<第7話>


遥「そういえば咲良さん、この間鹿児島でkou先輩に会ったんですよね?kou先輩から聞きましたよ!」

咲良「えっ?kouから聞いたの?」

遥「この間、東京でkou先輩と飲む機会があって、全部聞きましたよ。運命的な出会いだって言ってました。ウフフっ」

咲良「そうそう、仕事で鹿児島に行ったら偶然kouと同じ新幹線になって、ホント偶然にしても驚いたよ。運命的な出会いだって言ってたの?そんなわけないじゃん。本当?」

遥「kou先輩、酔っ払ってたけど、忘れられない最高の夜になったって言ってましたよ!」



(咲良の心境)

えっ、遥ちゃんどこまで知ってるの?もしかして全部知ってる?
彼は家庭もあるし、そもそもそんなに言いふらしたりする男じゃない。
でも、かなり酔っ払ってたって言ってたから、もしかして暴露しちゃったのかなぁ。
それにしても、遥ちゃんがkouと飲みに行く関係になったのかどうかが気になる。
私の前では彼はそんなに酔ったりしないし、遥ちゃんは私より心を許せる存在なの?
そんなわけない。
彼にとって特別な存在なのは私だけのはず。そう信じていたい。
あの夜だってそうだった。私だけが特別だったから、彼が抱いてくれたの。
彼はたしかに誰にでも優しいけど、特別なのは私だけだよね?
ねえ、kou?信じていいんだよね?



(遙の心境)

彼は咲良さんに会ったとしか言ってくれなかったけど、咲良さんの動揺がすごい。
やっぱりあの夜、彼と何かあったんだ、絶対・・・。悲しいよ。
たしかに咲良さんは特別な存在なのかもしれないけど、じゃあ私は何なのさ。
私だって、彼にとって必要な存在だし、軽い気持ちじゃなくてちゃんと愛されてるはず。
毎年必ず一緒の時間を過ごしているし、彼だっていつも私といるときはとても幸せな顔をしている。
だから、彼にとって本当に必要なのは私だけのはず。そう信じたい。
咲良さんだけには、負けたくない。
私だけが特別だから、彼が抱いてくれてるの。
彼はたしかに誰にでも優しいけど、特別なのは私だけですよね?
ねえ、先輩?信じていいんだよね?



咲良「もう遥ちゃんったら、kouとは10年以上も前に終わったんだから、知ってるでしょ?kouはもう結婚して2児のパパなんだよ。何もあるわけないじゃない。この間だって、鹿児島で芋焼酎を飲みながら鹿児島の美味しいものを食べてただけだよ。」

遥「そうなんですね。冗談ですよ。咲良さんに会ったって聞いただけですから。でも咲良さんの動揺、とても可愛かったです。相変わらず純情ですね。でもあの動揺、本当は何かあったのかなってちょっと勘ぐっちゃいました!」

咲良「もう〜、おばさんをからかわないの。意外に私、真面目なんだから。」

遥「ウフフ。でも私は、kou先輩によく飲みに誘われますよ。今でも。」



遥は気持ちよく酔いが進むのに対し、咲良は酔いは覚めていくばかり・・・。




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咲良がさくとき(鹿児島編)

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春が来るのはまだ遙か・・・(池袋編)

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春が来るのはまだ遙か・・・(浅草編)

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タブーの花が咲いてしまった(第6話)



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2016年04月19日

タブーの花が咲いてしまった(第6話)

<第6話>


「咲良さん!」

咲良が声の方を向くと、笑顔の遥が近づいて来た。

「遥ちゃん!」

「やっぱり咲良さんだ。似てる人かなって思ったんですけど、声かけて良かったです。ホントお久しぶりです。」

「遥ちゃん。本当に久しぶりだね。もう10年ぶりくらい・・・」

「咲良さん、時間ありますか?久しぶりだから、ゆっくり話したいです。」

「私は、大丈夫だよ。ちょうど友達とお茶して帰るところだったから。」



咲良と遥は、大学時代に同じ部活に所属していた。

俺と咲良は大学3年の時からつきあい始め、俺と咲良が4年になった時、遥は新入生として入部してきた。

割とガチな体育会系で、咲良は主務としてマネージャのリーダーを務めていた。

遥にとって、咲良はすっと憧れていて尊敬している先輩だった。



咲良も遥も、それぞれ別の友達とお茶を飲んできた帰り。

二人とも時間があるとのことであり、このまま街をブラブラ歩いてから、軽くご飯を食べに行くこととした。

遥「咲良さんは、今は東京ですか?」

咲良「私は、ずっと東京に住んでたけど、今は会社の転勤で大阪に住んで3年になるよ。遥ちゃんは、札幌?」

遥「私は埼玉に住んでるんですけど、そろそろ札幌に戻ってこようかなって考えたりしてるところです。」

咲良「そうなんだ。遙ちゃん、結婚は?」

遥「私はまだなんですよ。なかなかいい人が現れなくて。」

咲良「そっか。でも、私みたいに結婚で失敗するより、いい人が現れてからの方がいいかもね。」



ひととおり駅前を歩き、程よく歩き疲れた二人は、オシャレな居酒屋に場所を移した。

札幌ビール(クラシック)で乾杯する二人。

遥「せっかく年末年始に帰省したのに、友達はみんな結婚しちゃってて昼間にちょっとしか会えないし、家にいても結婚のプレッシャーが強いし、今日は咲良さんと飲めて嬉しいです!」

咲良「私もよ。友達はみんな家庭を築いちゃったから、なかなか逢えないからね。いっそのこと、仕事入れようかと思ったくらいだから。」



久しぶりの再会でも、盛り上がる女子トーク。

同じ場所で同じ時間を過ごした2人だから、分かり合える関係。



遥「さっきパセオで、咲良さんかなっ、人違いかなって思ったけど、やっぱり憧れの咲良さんだからすぐにわかりましたよ。」

咲良「ホント?嬉しい。遙ちゃんに出会ったときはまだ大学1年生で可愛かったけど、今はとっても素敵な大人になってるって思ったよ。」

遥「ありがとうございます。」



遥「そういえば咲良さん、この間鹿児島でkou先輩に会ったんですよね?kou先輩から聞きましたよ!」

咲良「えっ?kouから聞いたの?」

遥の顔はほろ酔いで笑顔のままだが、咲良の顔は動揺の色を隠せない焦りの真顔となっていた。




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咲良がさくとき(鹿児島編)

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咲良がさくとき(岡山編)

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春が来るのはまだ遙か・・・(池袋編)

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春が来るのはまだ遙か・・・(浅草編)

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タブーの花が咲いてしまった(第5話)



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2016年04月18日

タブーの花が咲いてしまった(第5話)

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咲良がさくとき(鹿児島編)

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咲良がさくとき(岡山編)

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春が来るのはまだ遙か・・・(池袋編)

<第4話はこちら>
春が来るのはまだ遙か・・・(浅草編)



<第5話>


「北海道新幹線、ホントに実現するのかなぁ」

咲良は思わずつぶやいた。

札幌駅には北海道新幹線の広告が大きく掲げられている。

「札幌駅もドンドン新しくなっていくね」

年末年始で帰省中の咲良は、友達とのランチとカフェでの語り合いを終え、札幌駅に着いたところだ。

「まだ時間があるから、少しブラブラしようかな」

そう独りつぶやき、パセオに向かって歩き出す。



咲良が札幌を離れて、既に15年。

当時は大丸もステラプレイスもJRタワーもなかった。

あったのはパセオ。

パセオの水の広場で、咲良はよく彼と待ち合わせをしてた。

彼のことは忘れなければならない。

でも、札幌には彼との思い出があふれ過ぎている。

今年は、鹿児島での彼との運命的な再会があり、また彼の優しさに触れてしまった。



「懐かしいな」

咲良は自然にパセオの水の広場に向かって歩いていた。

しかし、もう水の広場はなくなっている。

「彼との思い出も、消していかなければならないんだよね。」

若い大学生くらいのカップルが待ち合わせをしているのを見て、少し胸が切なくなる。

ちょうど昔の水の広場のあたりにたどり着いた時、咲良は急に話しかけられた。



「咲良さん!」

咲良が声の方を向くと、笑顔の遥が近づいて来た。

「遥ちゃん!」

彼を取り巻くタブーの二人が、久しぶりに顔を合わせてしまった。












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2016年04月09日

春が来るのはまだ遙か・・・(第4話)浅草編

翌朝、目覚めると隣には遙の寝顔。

いつもは優しくて可愛いくて、優等生キャラの遙。

でも昨日は想いの内をぶちまけていた。

遥もいろいろ悩んでるんだろうな。

咲良と比べるなんて・・・意外だけど、愛おしく感じる。




今日、土曜は仕事の関係もあり浅草へ。

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浅草寺の雷門や仲見世のお土産等を見てはしゃぐ姿は、またいつも通りの遙だ。

本当に健気で無邪気。

遙には、幸せになってもらいたいし、春が訪れて欲しい。

遙か先ではなくて、すぐ近い将来に。



仕事の所用も終え、浅草の下町を散策。

遙「すごいねぇ〜、いろんなお店があって面白い。そして、昼間からお酒飲んでる人がいっぱい!」

俺「面白いなぁ、さすが下町!」

遙「ちょっと楽しそうですね。飲んじゃいませんか?」

俺「いいけど、おしゃれな感じじゃなくていいの?」

遙「もうそんな年じゃありませんよ。昭和の女ですから。さあ、入りましょう!」



店に入り、おススメのハイボールを片手に、モツ煮を味わう。

俺「なんか、こんな天気の良い昼間からお酒を飲むなんて、美味しいけどバチ当たりな気分だな。」

遙「ホント。お酒だけじゃなくて、いろんな意味で罪悪感があってドキドキですよね。」

俺「もう・・・酔っ払っちゃえ。」

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遙「先輩と咲良さんって、絶対結婚するだろうと思ってたくらい仲良しだったのに、別れたって聞いたとき凄い驚きました。なんで別れたんですか?」

紅く染まった顔の遥がいろいろと聞いてくる。

俺「若かったからな。お互い。いろいろあったんだよ。もういいじゃん。それより、遥は結婚しようと思ったことはないの?」

遙「私は、つき合った人とは結婚を考えたことはあるけど・・・。この人かな?って思っても、この人じゃないなって思っちゃって。運命の人に出会えてるんだか、まだ出会えてないんだか、もうわかんないや。」

俺「たぶん、これから出会えるんだよ。だから、大丈夫!」

遙「こっちにいた方が出会えるのかな、それとも札幌に帰った方が出会えるのか、教えて欲しい。」

俺「神様に聞いてみるしかないね。」

遙「神様、私の運命の人はどこにいますか?もしかしたら、今わたしの目の前にいますか?」

俺「俺なんかよりもっと素敵な男が現れるはず!」

遙「そうだといいな・・・。」



店を出て駅に向かう。



俺「途中の駅まで送るよ。大丈夫か?」

遙「大丈夫、羽田空港までついて行くから。」

俺「昨日から疲れてるだろ?無理するなよ。」

遙「ダメ。人の多いところでも、ラブラブしちゃうの。」

俺「今日もだいぶ飲んだな〜。」

遥「先輩の思い通りにばかりはさせないですから。絶対に都合の良い女になんてならないんだから。」



羽田空港についても、身体を密着させて、手をつないでくる。

誰かに見つからないことを祈るばかり。

酔っ払った遥は、もう手をつけられない。



俺「じゃあ、行くよ。元気でな。」

遙「ちゃんと娘さんにクッキー買った?息子くんは、奥さんにも忘れちゃダメだぞ!」

俺「忘れてないよ。こんな時に家族のことを思い出させなくていいから。」

遙「先輩だけ幸せなんてズルいな。これからも、先輩の思い通りにばっかりなんてさせないから。覚悟してくださいね。」

俺「覚悟しとくよ、ずっと(笑)。」

遙「ウフフっ。大好き。」



遙に、早く春が訪れますように・・・心の底からそう思い始めてきた。

でも、春が来るのはまだ遙か先の予感・・・











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2016年04月08日

春が来るのはまだ遙か・・・(第3話)池袋編

久しぶりの東京出張が決まった。本社での仕事。

俺は遥(はるか)にメールを送る。

俺「来月の23日金曜に東京出張になったよ。遥は金曜の夜と土曜日は空けられる?大丈夫ならダブルの部屋を抑えとくから。池袋でいい?」

その日の夜、遥からメールが返ってきた。

遥「23日の夜も24日も大丈夫です。場所もおまかせします。ずっと会いたかったです。やっと逢えますね!」



出張当日、朝の飛行機で東京に向かう。

娘には「パパ、お土産はクッキーでお願い。忘れないでよー。」と言われた。

せっかくの本社なので、同期の仲間とランチ。みんなの近況を聞いて刺激を受け、午後の仕事を無事に終える。



遥との待ち合わせは19時。早目に着いた俺は、先にチェックインしようかと思ったが、遥を待つこととし、池袋駅前のカフェでコーヒーを飲む。ブラックの苦味が、大人の味であり、人生の深みを彷彿とさせる。

到着したというメールを確認して、店を出る。

遥が俺に気がつき、笑顔で近づいてくる。

遥「お待たせしました♪」

彼女の笑顔の純粋さに少し心が痛む。

俺「やっと逢えたね。」

2人でホテルにチェックインし、近くのスペインバルに入ることにした。



俺「元気だった?頑張ってる?」

遥「元気といえば元気ですし、頑張ってます。そして、ずっと逢いたかったです。」

スペインのスパークリングワインで乾杯する。

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遙「札幌には結構帰ってますか?」

俺「子供達もいるし、なかなか帰れないよ。年に1回、正月くらいかな。」

遙「そうなんですね。私は札幌を離れて10年、そろそろ帰ろうかなって思ってます。」




遙は大学時代のサークルの後輩。当時はただの後輩だった。

今からちょうど10年前。俺が会社に入ってまだ4年目、最初の配属先である埼玉に住んでいた頃、俺は遙と再会した。もちろん別々の会社だが、同じ部活の後輩の結婚式で再会し、意外と近くに住んでいることがわかり、意気投合した。

そして、何回か仕事帰りに飲みに行くようになった。

クリスマスが近づく12月。まだ新人だった彼女は、仕事で大きな失敗をし、会社を辞めて北海道に帰ろうかというくらい落ち込んでいた。

そんなことは知らず、年末に向けた多忙期でストレスが溜まっていた俺は、仕事以外の癒される飲み会を求めて、彼女を飲みに誘った。

遙「先輩、私・・・」

俺と遥は、男と女の関係になった。俺が結婚してからも、そして転勤してからも、少なくとも年に一度は逢瀬を続けていた。





俺「俺たちが埼玉で再会した時も、そんな話だったよね。もう10年か・・・」

遙「でも、大学生の時に先輩が酔っ払って、私に壁ドンしたんですよ。壁ドン!覚えてますか?」

俺「そういえば、なんとなく覚えてるよ。当時は壁ドンなんて言葉なかったけどな。」

遙「あの頃は、先輩は咲良さんと付き合ってて、お似合いのカップルでしたよね。」

俺「咲良といえば、こないだ鹿児島出張の時に偶然会ったよ。」

遙「えっ、そうなんですか。運命の再会なんて、ドラマが生まれませんでしたか?」

俺「もう昔のことなんだから、そんなことあるわけないじゃん。」

遙「怪しいなあ〜。でも咲良さんがいながら、私に壁ドンなんかしちゃって、先輩は昔から悪い男ですね。」

俺「俺はさ、自分に正直に生きてるだけだよ。」

遙「今思えば、あの時から先輩の存在が大きかったんです。あの頃も、そして今までずっと・・・。」



情熱の国スペインのお酒が進み、雰囲気に酔いしれる。

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遙「新しい恋に踏み出さなきゃ、いつまでたっても春が訪れないってわかってる。頑張って恋をしようって思ってるんです。」

俺「そうだよね・・・」

遙「それなりに言い寄ってくれる人はいるけど、先輩よりも素敵な人がなかなか見つからないんです。もう、ホント責任とってくださいよ!」








気持ちよく店を出た2人は、ホテルの部屋に戻った。



俺「飲み過ぎてないか?大丈夫か?」

遙「大丈夫〜。それより、私、可愛い?」

俺「可愛い可愛い。飲み過ぎたみたいだね。水でも飲んで。」

遥「ねえ、ちゃんと答えて。ホントに可愛い?咲良さんより?」

俺「・・・可愛いよ。」

遥「遥の春は、貴方しかいないんだから。貴方だけなの。ねえ、わかってる?」



俺は何も言えず、遥を強く抱きしめるしか出来なかった。








kou_blue97 at 23:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年03月25日

咲良がさくとき(第2話)岡山編

<第2話>

翌朝、目覚めると隣には咲良の寝顔。

あの頃に比べるとお互い歳を取ったなと感じる。

微笑ましい。

スマホを見ると妻からのLINE。

「おはよう。鹿児島はどう?出張頑張ってね。子供達もお土産楽しみにしてるよ〜」

現実が待ち受ける。

咲良の寝顔をもう一度見る。

可愛い寝顔。

咲良は天使なのか、それとも悪魔なのか。



咲良「おはよう。起きてたの?早いね。」

俺「さっき起きたところだよ。」

咲良「もうわがまま言わないから。ゴメンね。でも、ありがとう。」

俺は何も言わずに彼女を抱きしめ、口づけを交わす。

動き出した時計の針は、もう止まらない。



帰りの新幹線の約束をして、俺は彼女のホテルを出た。

自分のホテルに戻り、シャワーを浴びて着替える。

妻にLINE。

「鹿児島の夜は芋焼酎が美味しかったよ。今日、帰るけど遅くなるから先に寝ててね。お土産、任せとけ。」



鹿児島での仕事を終え、鹿児島中央駅に15時に待ち合わせ。

2人、咲良と新幹線に乗る。

咲良「昔は、2人で旅行したこと思い出すね。懐かしいな。」

俺「そうだけど、過去にすがらないで、未来に向かっていけよ。」

咲良「わかってるよ。でも、貴方よりも幸せにしてくれる人に出会うのって、難しいんだよ。」

俺「新幹線さくらって、良い響きだな・・・。」



鹿児島から岡山まで、3時間ちょっと。

いろいろな話で、あっという間に時間が過ぎ去る。

名残惜しい。

俺「俺は、岡山で乗り換えだから・・・。元気でな!」

咲良「私も一緒に降りる!」



咲良も新幹線を降りた。

途中下車して、岡山駅前でご飯を食べてから帰ることに。

俺「長旅で疲れてるだろ?1杯だけだぞ。」

咲良「大丈夫。もう次はいつ会えるかわからないんだから。ほんとは今日は帰さない!って言いたいところだけど、我慢するからさ。もう少し、一緒にいて。」

瀬戸内海のママカリとタコを味わいながら、最後の時間を過ごす。



俺「そろそろ終電だよ。さて、帰るぞ。」

咲良「・・・うん。」

岡山駅の改札を入る。


咲良「おやすみのチューしてくれないと、帰らない。」

俺「人前だぞ。恥ずかしいだろ。」

咲良「してくれないと、帰らないから。」


天使でもあり、悪魔でもある。

柱の陰に隠れて、軽く口づけを交わす。


咲良「そんなんじゃ、全然足りないよ。」

俺「もう・・・わがまま女。」


熱く、長い口づけを交わす。


咲良「ありがとう。私、頑張って幸せになるから。」

俺「ああ、幸せになれよ。」


咲良の目から、一筋の涙がこぼれる。


いつか本当の幸せを手にして、咲良がさきますように。

そう祈って、もう一度最後の口づけを交わした。



口の中に広がる、咲良とのたくさんの思い出と記憶。

そして切なさ。

頬を伝って流れてきた涙が、少ししょっぱく感じた。



咲良がさきますように。






<岡山のママカリ>

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kou_blue97 at 22:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年03月24日

咲良がさくとき(第1話)鹿児島編

<第1話>

仕事で鹿児島に行くことになった。

人生初の、九州上陸。

新幹線「さくら」に乗っての長旅。



新幹線で時間を持て余した俺は、咲良にLINEを送る。

俺「今、新幹線さくらに乗って、鹿児島に向かってるよ。人生初の九州。」

咲良「えっ、私も新幹線で鹿児島に向かってるところ。今、博多を過ぎたあたり。」

俺「ホント、同じ新幹線じゃん。ミラクル!」



偶然にも咲良と鹿児島で再会なんて、運命を感じる。

夕方遅くに鹿児島に到着。

俺「何食べたい?」

咲良「行きたいところがあるんだけど、一人じゃ怖くてどうしようかと思ってたの。いい?」

二人が向かったのは「かごっま屋台村」。

鹿児島の旬の食材と郷土料理を味わえる小さな屋台が並ぶ。

俺と咲良はカウンターに並び座る。

俺「何飲む?」

咲良「貴方と同じのがいい。」

俺「鹿児島に来たんだから、俺は芋焼酎飲まないとね。寒いからお湯割りで。一緒で大丈夫?」

咲良「ちょっと酔いそうだけど、せっかくだから私もいただく。貴方がいるから酔っても大丈夫だもんね。」

芋焼酎で乾杯。

きびなご、黒豚なんこつ煮、さつま揚げを堪能。

咲良の顔が紅く染まる。



咲良「いつもFacebookで見てるけど、あたたかい家庭を築いて幸せそうね。」

俺「まあね、幸せだよ。咲良は?」

咲良「ほんとはもっと幸せになるはずだったんだけどね・・・」

俺「でも、今でも咲良は輝いてる。いい女だよ。」

咲良「私も、貴方と結婚すれば私も幸せになれたのかな。」

俺「そうかもしれないけどさ。俺よりも、元旦那が良くて選んだんだろ(笑)。」

咲良「そうだけどさ・・・あの頃に戻りたいって思う時もあるよ。」

芋焼酎が身体に染み入り、夜も更けていく。

俺「ちょっと歩こうか?」



夜風に当たりながら、甲突川沿いを歩く2人。

自然と手をつないで、寄り添い合う。

俺「歴史、時間の流れを感じさせる町並みだね。昼間に歩けば楽しめそう。」

咲良「でも、貴方はもう結婚してしまったから、昼間に堂々と手をつないで歩くことなんて出来ない。時間の流れを感じてしまうわ。」

俺「いろんな経験があったから、今咲良は輝いてるんだよ。これから素敵な人との出会い、そして幸せが待ってるはず。」

咲良「そうだといいな。でも、今日だけは未来じゃなくて、幸せだった過去にすがりたい・・・」

俺「咲良らしくもないな。ちょっと飲み過ぎたか?」

鹿児島も、まだ3月は夜風が冷たい。



俺「せっかく芋焼酎で暖まったのに、身体が冷えちゃったね。コーヒーでも飲んで帰ろうか?それとも鹿児島ラーメンでも食うか?」

咲良「身体よりも、心の方が冷えちゃった。今日だけはあの頃に戻りたい。独りにしないで。貴方の優しさで、私のさくらを咲かせて欲しいの。」



止まったはずの時計の針が、15年ぶりに動き出した。






<新幹線さくら>

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<かごっま屋台村>

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きびなご、黒豚なんこつ煮とか・・・写メ撮り忘れた(涙)


<鹿児島ラーメン>

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<第1話はこちら>
 咲良がさくとき(鹿児島編)
<第2話はこちら>
 咲良がさくとき(岡山編)
<第3話はこちら>
 春が来るのはまだ遙か・・・(池袋編)
<第4話はこちら>
 春が来るのはまだ遙か・・・(浅草編)
<第5話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第5話)
<第6話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第6話)
<第7話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第7話)
<第8話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第8話)
<第9話はこちら>
 阿波で心も浮いてきた(第9話)
<第10話はこちら>
 阿波で心も浮いてきた(第10話)
<第11話はこちら>
 ワインの花がまだ開かなくても(第11話)
<第12話はこちら>
 ワインの花がまだ開かなくても(第12話)
<第13話はこちら>
 幸せは涙の中に咲いていく花(第13話)
<第14話はこちら>
 幸せは涙の中に咲いていく花(第14話)

kou_blue97 at 23:21|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2016年01月20日

火花

この間、又吉直樹さんの「火花」を読みました。

感想は、賛否両論あるみたいですね。

面白かったかどうかと言われると、どうだろう。

「純文学」ですからね。

「純文学」とは、大衆小説に対して「娯楽性」よりも「芸術性」や「文学性」に重きを置いている小説のようです。

「芸術性」ってなんだ?

「芸術性」とは、作品として評価した時の味わいの豊かさや完成度の高さ。

らしい。

「文学性」の意味については、よくわかりませんでした。

ググっただけですが。

言葉の定義はよくわかりません。

難しい。

でも、矛盾してるかもしれませんが、「火花」を読んで、「芸術性」と「文学性」を僕は感じました。

正直、ストーリーはそれほど面白くはないかもしれません。

「娯楽性」は低いです。

でも、登場人物の心理描写、心の動きうや葛藤、そして行動。

細かいところ、深いところまで、作者の表現したい想いがとても表れていたと思います。

僕には伝わってきた。

自分の世界観で表現すること。

それが芸術性なのかな。

好きか嫌いかと言われば、嫌いじゃないです。

好きかも。

自分の心の内を、自分の世界観で表現すること。

そして、それが伝わる人にだけちゃんと伝わり、響くこと。

それが人間の浪漫ですね。

とても、憧れる。

いつか自分も心の内を、自分の世界観で、自分の言葉で、作品として表現したいな。

ただの自己満足かもしれないけど。





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