2022年09月01日

惚れた病と湯花の香り(第16話)

春、桜が舞う季節の人事異動で群馬県民となった。

人生初の単身赴任がスタート。

仕事も自炊や家事などの生活も落ち着いてきた、梅雨明けの初夏。

「kou、久しぶり!元気?群馬での単身生活はどう??」

咲良からのLINE。

「久しぶりだね。群馬は自然も歴史もいろいろあって良いところだよ。少しは寂しさもあるけど、いろいろ楽しめてるかな。」

「そうなんだ。良かったね。私はね…9月から韓国に転勤になったの…」

「えっ、韓国?転勤??びっくり!さすが、出来る女は違うね〜」

「そうでもないんだけどさ。いろいろ大変なのよ」

「そっか。でも、いずれにしてもご栄転でしょ?だったら、壮行会しないとね!」

「うん。ありがとう。最後に、日本の温泉に泊まりたいな。わがまま言って良い?」

「もちろん。群馬は温泉がたくさんあるからね。じゃあ、草津温泉の宿を探しておくね」



そして、当日。JR高崎駅で待ち合わせ。

新幹線で来る咲良をKICKSで迎えに行く。

「群馬県へようこそ。」

「群馬って、意外と近いんだね。あっという間だったよ。」

咲良を助手席に乗せる。

「kouが運転する車に乗るのなんて、大学生の時以来だね。」

「懐かしいなぁ。小樽の毛無山まで夜景を見にドライブしたり…」

〜あの頃を懐かしむ二人〜

「新幹線で1時間、車で1時間来るだけで、都会とは景色がこんなに変わるんだね。」

「そうだね。この景色、なんか少し北海道を思い出すね。」

草津温泉までの心地よいドライブ。

〜二人の時間が、あの頃に戻り始める〜



そして、草津温泉へ。

<湯畑>
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「あー、いつもテレビで見る湯畑だね。」

湯畑を見てはしゃぐ咲良。

〜長い年月を経ても、あの頃の面影が大きく残る〜

「もう昼過ぎだけど、何か軽く食べる?それともビールでも飲む?」

「うーん。お酒は夜まで我慢。夜はいろいろ話したいこともあるし…。でも、夕食まではたくさん観光しよう!」

「了解。湯畑と湯もみだけじゃなく、裏草津とか西の河原とかいろいろあるみたいだから、行ってみよう!」

<裏草津>
DSC_2296


「裏草津って、なんだか落ち着いてるけど、新しさも感じる雰囲気だね。」

「そうだね。あっ、見て足湯とかあるよ。あと、顔湯だって!」

「美肌に効果があるみたいだよ。でも、化粧が落ちちゃうね。咲良はもうこれ以上美しくならなくても良いんじゃね?」

「ふふふっ。相変わらずお上手ね。」


<西の河原>
DSC_2291


「川が流れてるね。温泉なのかなぁ?触ってみようっと」

咲良が湯の川に手を入れてみる。

「あっ、あったかい。自然の足湯になるよ。」

「ほんとだ。ちょっとたくさん歩いたから、少し休もうか。」

「ねえ、kou。覚えてる?アメフト部の夏合宿が終わった後、同期みんなで露天風呂に行ったの。」

「もちろん覚えてるよ。朝から夜までアメフト漬けの生活からの解放感や達成感の温泉!だけど、生傷が少し染みるやつ。」

「あの時までは、露天風呂は雪景色の冬の風物詩だって思ってたの。でも、あの真夏の露天風呂に入った時、夏の温泉が素晴らしいってことに気がついたんだ。」

「そんなこともあったなぁ。まあ、青春が詰まった日々だったからな。」

「そうよね…」

「さーて、そろそろ宿に行こうか」



宿に到着し、風情のある和室に入る。

「素敵な部屋。しかも、部屋に露天風呂もあるの?贅沢〜」

「まあな、咲良の壮行会だからな。」

「ありがとう。しばらく日本に帰れないかもしれないからさ…本当に嬉しい。」

「ご飯にする?お風呂にする?それとも…」

「はいはい。夕食まで少し時間があるから、大浴場に行きましょう。」



そして、夕食は部屋食。

「さて、お風呂も最高だったし、いよいよ夕食だね。」

「素敵な和食懐石ね。美味しそう。」

「何飲む?ビールにする?」

「日本を離れて韓国に行くから、今日は日本酒を飲みたいな。いい?」

「OK。じゃあ地酒が良いよね。浅間酒造の『秘幻』にしよう。」

〜秘幻。夢のような幻ような、二人の時間。〜

「それで、韓国行きはどうなの?チャンスなの?それとも、本当は行きたくないとか?」

今日、咲良は仕事の話を一切していない。

「うん。チャンスはチャンスで楽しみなんだけどね。でも、外国だから不安も大きいし…」

「まあ、たしかに不安はあるよね。俺なんて、群馬に来るだけで、不安と期待が結構大きかったから。」

「それとね…彼氏が反対していてさ…仕事を取るなら終わりにするって…」

「そっか。今の彼とは結構長いもんね。彼とはさ、将来も考えていたの?」

「まあね。バツイチの40手前だからさ、ラストチャンスかなとか、いろいろ考えてたよ。」

「そうだよな…それにしても、日本酒『秘幻』、美味しいなぁ」

〜二人の時間は、現実に戻る〜

「やっぱりダメね。恋で悩んだり、将来に悩んだときは、ついkouに頼っちゃう。もう甘えちゃいけないんだってわかってるし、いつも言い聞かせてるんだけどね。」

「そんなこと言ったら、俺のほうがダメだよ。そんな権利もないし、愛してるとは少し違うんだけどさ。いつでも頼ってほしいし、咲良の特別でいることが嬉しいし。」

「kouとは久しぶりに会っても、時が流れていても、いつでもあの頃に戻れるの。大人のプライドも捨てて、遠慮も捨てて、本音の自分でいられるの。」

「俺もそうだよ。あの頃から、ずっと変わらない。いつでも前向きで一生懸命な咲良を応援したい。咲良が韓国に行ったって、電話もLINEもあるんだから。遠慮しないで、いつでも連絡してほしい。それが俺の喜び、そして誇りだから。」

「そんな優しいこと言っちゃダメなんだから…そんなこと言ったら、本当に頼っちゃうんだから…」

「わかってる。大丈夫だから。咲良…こっちにおいで…」



二人の間の特別な距離感。
それは、あの頃から続く惚れた病。
泉質の効能高き草津温泉。
草津の湯でも、二人の惚れた病は治りはしない。
草津のお湯の中には花が咲く。
湯花の香りで花が咲く。





(参考:シリーズもの)

<第1話はこちら>
 咲良がさくとき(鹿児島編)

<第2話はこちら>
 咲良がさくとき(岡山編)

<第3話はこちら>
 春が来るのはまだ遙か・・・(池袋編)

<第4話はこちら>
 春が来るのはまだ遙か・・・(浅草編)

<第5話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第5話)

<第6話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第6話)

<第7話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第7話)

<第8話はこちら>
 タブーの花が咲いてしまった(第8話)

<第9話はこちら>
 阿波で心も浮いてきた(第9話)

<第10話はこちら>
 阿波で心も浮いてきた(第10話)

<第11話はこちら>
 ワインの花がまだ開かなくても(第11話)

<第12話はこちら>
 ワインの花がまだ開かなくても(第12話)

<第13話はこちら>
 幸せは涙の中に咲いていく花(第13話)

<第14話はこちら>
 幸せは涙の中に咲いていく花(第14話)

<第15話はこちら>
 黒潮の雰囲気に流されて(第15話)



kou_blue97 at 23:45│Comments(0) 后箆∈椒轡蝓璽困發痢 | Ψ嫁

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kou_blue97

【自己紹介】
・札幌生まれ札幌育ち
・現在は群馬在住
(←東京←徳島←千葉…)
・転勤族のサラリーマン
・ミスチル世代の団塊ジュニア

【好きなモノ】
・アメフト観戦
・ミスチル鑑賞
・子供とおでかけ
・転勤で知らない土地を満喫
・現実と妄想の狭間で微笑ましく生きる
・小さな幸せのかけらを積み重ねる

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