2015年11月20日

小さな恋の物語(4)

<第13話>

久しぶりに彼女に電話をかけた。彼女は相変わらず明るい声で話してくれた。

久しぶりの電話なのに、毎日電話をしていたかのような自然な会話。

そう、これは恋なんだ。確信した。

燃えるようなときめきではないけど、居心地がいいというか、自然体でいられるというか、そんな感じの恋の予感が、たぶん確信に変わったのだと思う。

そう思うだけで、僕は幸せだった。

『今度、一緒に映画でも見に行きたいな。』

『そうだね。落ち着いたら行こうね。』

そんな会話も自然に出てくる。脈がないこともない。

『実家に帰る日って決まったんだっけ?』

『うん。早めに休めたから、24日の飛行機で帰ることにした。』

クリスマスは逢えない。僕のクリスマスは終わった。




ちょっと前の僕なら、きっとそう思っただろう。

でも今の僕は違った。

『じゃあ、実家でゆっくり過ごせるんだね。』

『うん。実家に帰るのはすごく久しぶりなの。』

ちょっとくらい話が出来ない日々があっても、また楽しく話せる日がくる。

そう思えることが出来た。

(クリスマスまで後1週間)



<第14話>

久しぶりに彼から電話がきた。彼の声は優しく、暖かく、いつも通りの彼だった。

正直、彼から電話が来るのか不安もあった。

彼と話すのは楽しいけれど、彼からはクリスマスに誘われたこともないし、まだデートの誘いすらない。

彼の気持ちはわからない。

わからなかったけど、彼からの電話はいつも嬉しかった。

今回の久しぶりの電話も、もちろん嬉しかったし、安心した。

『今度、一緒に映画でも見に行きたいな。』

『そうだね。落ち着いたら行こうね。』

初めて誘ってくれた。なんか、嬉しい。

『実家に帰る日って決まったんだっけ?』

『うん。早めに休めたから、24日の飛行機で帰ることにした。』

この寂しいアパートで一人クリスマスを過ごしたくなかったし、ここのところ全然実家に帰ってなかったから、今年は早めに実家に帰ることにした。

『じゃあ、実家でゆっくり過ごせるんだね。』

『うん。実家に帰るのはすごく久しぶりなの。』

クリスマスは逢えないけど、 落ち着いたら本当に彼とデートしたいな。

ちょっびり不安もあったけど、また彼は電話をしてくれる。

そう信じることが出来た。

(クリスマスまで後1週間)



<第15話>

クリスマス。聖なる夜。

今年のクリスマスは、結果として彼女を誘うこともなく、他に特別予定もなく、普通に家族と過ごすことになった。

外は粉雪が舞う穏やかな夜。

粋なサンタが演出する、恋人達のためのホワイトクリスマス。

日本の至るところで、世界の至るところで、新しい幸せが次々と誕生している。

街中のイルミネーションを見ながらだったり、輝く夜景を見下ろしながらだったり、ケーキのロウソクに火を灯しながらだったり、ベッドの枕もとに大きなくつしたを飾りながらだったり。

愛する恋人や、愛する家族や、愛する子供達の胸の中に、また一つ大きな幸せが刻まれていく。

それがクリスマス。

結局、僕と彼女はクリスマスを共に過ごさなかった。

でも、もしクリスマスが、 新たな幸せを生み、大きな幸せを運ぶものだとすれば、僕にはちゃんと新しい幸せの種と大きな幸せの種が与えられた。

そして、ちょっとずつ芽生え始めている。

これがサンタからの今年の贈り物。

彼女にも、僕と同じものが贈られてるに違いない。きっとそうだ。

サンタからのプレゼントは、新しい幸せの種と大きな幸せの種。

プレゼントに添えられたメッセージカードには、 『どんな花が咲くかはお楽しみ。全てこれからの君たち次第。』と書かれている。

ジングルベルを合図に、僕たちの恋はこれから始まる。

来年こそはと胸が震える。

いつか素敵な花が咲くことを、サンタが過ぎ去った雪の舞う星空に祈り続ける。

こんなクリスマスも、大切な思い出の1ページ。

(完)




<エピローグ>

年が明けてからも、2人はお互い忙しく、たまに電話をするだけの関係が続いた。

なかなか会えない中でも、お互いの存在は少しずつ大きくなっていた。

2人の初めてのデートが実現したのは、クリスマスから半年も経った後だった。


それから少し経って、2人は恋人になった。

さらに、そのクリスマスから16年後・・・。




彼は、当時を振り返り、このblogに思い出を残している。

彼女は妻となり、彼の隣でこのblogを見て、微笑んでいる。



「ねえ、なんで初デートまでこんなに時間がかかったの?おかしくない?他に誰か狙ってたの?」

「いやいや、お前は夢に向かって勉強とレポートと実習ばっかりだっただろ。俺だって、チームのディフェンスキャプテンになったばかりで、毎日アメフトのビデオ見たり、新システムとか考えてたわ。」

「そっかー。そうだったよね。そういえば、初デートしてからも、実際につき合ってからも、全然会えなかったよね。よく続いたな(笑)。」

「しかも、その後は海を越えて600劼留鶺離恋愛になったから、さらに全然会えなかったしな!」



毎年11月になると蘇ってくる思い出。

そんな懐かしい、小さな恋の物語。

(この物語は2007年12月に掲載したノンフィクション「Christmas物語」をリメイクしたものです。エピローグは、今回追加。)

kou_blue97 at 00:00│Comments(6)TrackBack(0) 后箆∈椒轡蝓璽困發痢 

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この記事へのコメント

1. Posted by DB   2015年11月21日 15:56
あの、いろんな意味で前代未聞の飲み会めっちゃ懐かしいですね!
2. Posted by kou_blue97   2015年11月21日 20:03
>DBさん

いろいろあったけど、結局2夫婦誕生してるから、まさに奇跡の出会い!
3. Posted by 後輩   2015年11月22日 17:13
そんな素敵な出会いなんだから、新しい出会いなんて望んじゃダメですよー
4. Posted by kou_blue97   2015年11月23日 07:24
>後輩さん

もちろん夫婦仲良しなので、大丈夫ですよーo(^-^)o
5. Posted by さくら   2015年12月01日 21:18
奥様との出会い、素敵ですね。
先輩みたいな恋をしたいです♪
6. Posted by kou_blue97   2015年12月02日 06:30
>さくらさん

ありがとうございます。
素敵な恋、頑張ってください!

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kou_blue97

〇札幌生まれ札幌育ち。現在は東京在住(←徳島←千葉…)。転勤族のサラリーマン。ミスチル世代の団塊ジュニア。
〇好きなモノ
 アメフト観戦、ミスチル鑑賞、blog執筆、子供とおでかけ、宮脇咲良を応援、転勤で知らない土地を満喫、現実と妄想の狭間で微笑ましく生きる、小さな幸せのかけらを積み重ねる。

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