2015年11月17日

小さな恋の物語(1)

<第1話>

彼女と出会ったのは11月の上旬。紅葉なんかとうに終わり、雪もちらほら降り始めている。 長く寒い冬が始まろうとする季節に、僕らは出会った。

若者の飲み会。いわゆる合コン。

クリスマス前のこの季節。

クリスマスまでに駆け込み的に恋人を見つけようという気持ちが、参加したみんなの胸の中にあったかどうかは定かではないが、そうなれればいいなぁくらいは多分思っていたはずだ。

僕と言えば、2次会のカラオケで気になる子の隣をキープしたにも関わらず、楽しい雰囲気と盛り上げなければならないプレッシャーが合わさって、酔いつぶれる有り様。

もちろん電話番号など聞いていない。

彼女との出会いはそんな感じだった。

(クリスマスまで後7週間)



<第2話>

電話番号くらい聞いておけば良かったといつも思うくせに、イヤらしいとかガっついてるとか周りに思われたくないから、合コン中も2人で話すチャンスと自然なタイミングを待ち過ぎて、結局聞けずじまいになるのはよくある話。

勇気と妙なプライドがいつも戦っている。

たいていは、勇気が負ける。そして傷付き、また希望に向かって進んでいく。

ただ今回は、事情が違った。 僕が彼女に興味があることに気付いた彼女の後輩の女の子が、
『電話番号聞いてあげましょうか?』と僕に言ってくれたこと。

彼女の後輩と知り合いだったのが幸運の1つ。

まあ男なんて単純だから、合コンでも何でも、誰が誰狙いなんて、後輩だろうが女の子にはすぐにお見通しなんだろうけどさ。

それに、彼女の後輩も本当に応援してくれていたのか、なんか面白そうだっただけなのかはわからないけど、とりあえずお願いしてみることにした。彼女と、もうちょっといろんな話をしてみたいと強く感じでいたから。

そうして、彼女の後輩から電話番号が書かれた紙と、
『電話してもいいって言ってましたよ。頑張ってくださいね。』
という返事をもらうことが出来た。

(クリスマスまで後6週間)



<第3話>

やっと電話番号をゲットしたはいいけど、意外に電話をかけるタイミングって難しい。

『この前は楽しかったね』とかフレンドリーに話すも良し
『もっとゆっくり話したいと思ってたんだ』とか好意をほのめかすも良し
いろんなシチュエーションが想像出来てしまう。

たくさんの引き出しを用意したはずなのに、結局舞い上がっちゃうんだろうけどな。
まあ、飾った俺なんかより、飾らない素の俺を知って欲しいからいいんだけど。
素の俺が受け入れられないなら、それは仕方がないこと。キッパリ諦めよう。
な〜んてことや、 名字にさん付けでいいかな?とか、名前にちゃん付けはまだ早いかな?とか、
くだらない妄想は尽きない中で、やっと彼女の携帯に電話をする時が来た。

それはうっすら雪が積もった夜のことだった。

(クリスマスまで後1か月)



<第4話>

帰宅途中の冬の夜道。

月明かりが灯す細い道路には人影はなく、 静けさの中に、 固まった雪を踏むあの機械的な音と、携帯電話で話す緊張した僕の声だけが、深々と冷える凍えた空気を震わせていた。

初めての彼女との電話は、10分くらいだったと思う。たぶん、たわいもない話しか出来なかったのだろう。 簡単に想像出来る。

彼女は生まれた街を離れ、海を渡って今は一人暮らし。そして夢に向かって頑張っている。

その努力の奥には苦労や辛さが絶えないはずなのに、普段はそんな素振りも見せず、努力の影すら見せない。

これらは後からわかったことだが、最初の出会いと最初の電話だけでも、彼女のしっかり者の部分が垣間見えていたと思う。

そんなところに惹かれていったのかもしれない。

合コンで、彼氏はいないと言った言葉を信じて、何度か電話をする仲になっていった。

時はもう12月。

(クリスマスまで後3週間)



<第5話>

最近は雑誌を見ても情報誌を見ても、クリスマス特集一色。僕のリサーチによると、やっぱり『美味しい食事』と『思い出に残る場所』は欠かせない。

相手もいない、お金もない、でもクリスマスデートの妄想は絶えない、それがなんか切ない。

彼女とクリスマスを一緒に過ごしたいという思いだけが、僕の中でどんどん大きくなってゆく。

付き合ってもいないのに。デートすらしていないのに。彼女が好意を持ってくれているかもわからないのに。

彼女は好きな人いるのかなぁ。まあ好きな人くらいいるだろう。憧れの先輩だったり、友達感覚の同期だったりするのかも。

たまに電話で探りを入れたりするけど、なかなか核心には迫れない。

そんなヤキモキの日々を送っていたところ、『なんか街はもうクリスマス一色だよね』と、自然に会話が膨らんでいった。

まるで神様が誘導してくれたように。

クリスマスに誘うのは今しかない。

(クリスマスまで後20日)



<第6話>

内心はドキドキしながらも、平然を装うように、 『なんか街はもうクリスマス一色だよね』なんて話を切り出してみる。

彼女はクリスマスに予定があるかもしれないし、 予定なんかなくても僕なんかとは過ごしたくないかもしれない。

だけど、今はもう突き進むしかない。

『そういえば、今年のクリスマスはどうするの?』よし、自然に言うことが出来た。

『う〜ん。クリスマスは実家に帰ろうかなんて思ってる。』

えっ、どういう意味だろう。

もともと本当にそういう予定だったのか、実は実家で待っている人がいるのか、それとも暗に誘わないでくださいオーラを出したのか。

『あっ、実家に帰るんだ〜。』

一瞬の沈黙の中、 様々な不安が僕の頭の中を駆け巡り、また僕の中の勇気というものが、奥へと隠れていくような気がした。

『飛行機で帰るんだよね。もうチケットとか取ったの?』

『まだなんだぁ。帰るのいつにしようかなって迷ってるところ。』

進むべきか、 退くべきか。 迷いはつきない。

(クリスマスまで後20日)



kou_blue97 at 00:00│Comments(0)TrackBack(0) 后箆∈椒轡蝓璽困發痢 

トラックバックURL

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Profileです。

kou_blue97

〇札幌生まれ札幌育ち。現在は東京在住(←徳島←千葉…)。転勤族のサラリーマン。ミスチル世代の団塊ジュニア。
〇好きなモノ
 アメフト観戦、ミスチル鑑賞、blog執筆、子供とおでかけ、宮脇咲良を応援、転勤で知らない土地を満喫、現実と妄想の狭間で微笑ましく生きる、小さな幸せのかけらを積み重ねる。

アクセスカウンター
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

最新コメント
記事検索
画像
  • コオロギを食べる娘(昆虫食)
  • コオロギを食べる娘(昆虫食)
  • コオロギを食べる娘(昆虫食)
  • コオロギを食べる娘(昆虫食)
  • コオロギを食べる娘(昆虫食)
  • 夏を涼しく
  • 夏を涼しく
  • 夏を涼しく
  • 夏を涼しく
  • 夏を涼しく
  • 夏を涼しく
  • 夏を涼しく
  • ヒダリマキマイマイ(カタツムリ)のお家
  • ヒダリマキマイマイ(カタツムリ)のお家
  • ヒダリマキマイマイ(カタツムリ)のお家
  • ヒダリマキマイマイ(カタツムリ)のお家
  • ヒダリマキマイマイ(カタツムリ)のお家
  • 6月
  • 6月
  • 6月
  • 2020年5月25日 緊急事態宣言を解除
  • 2020年5月25日 緊急事態宣言を解除
  • 2020年5月25日 緊急事態宣言を解除
  • 2020年5月25日 緊急事態宣言を解除
  • 2020年5月25日 緊急事態宣言を解除
  • ゴールデンウィーク(ステイホーム週間)
  • ゴールデンウィーク(ステイホーム週間)
  • ゴールデンウィーク(ステイホーム週間)
  • ゴールデンウィーク(ステイホーム週間)
  • ゴールデンウィーク(ステイホーム週間)