2015年10月05日

もしアメフトの魅力を・・・物語を書くとしたら (第14章)

もしアメフトの魅力を知ってもらうための物語を書くとしたら

第14章 試験期間中

<第38話>

 試合後のミーティングの後、試合に出られなかった1年生のわだかまりも解けて、僕達は、また前に向かって歩み出そうと気持ちを切り替えていた。
「明日、久しぶりのオフだけど、みんな学校には来るだろ?天気もいいみたいだしさ、1年生みんなで海に行こうよ。」僕はみんなに提案した。
「よし、せっかくだから行こうぜ。」周りのみんなが同調する。
「マネージャーは、水着持参でお願いしまーす。」児玉が盛り上げようと便乗する。
「残念ながら、水着は着ませーん。でも、海なんて久しぶりだから、楽しみ!」マネージャーの大島も同調してくれる。1年生全員で海に行く企画が成立した。

 学校から海までは車で30分程度。午前の講義だけの人達は先発隊として昼から海に直行、午後の講義がある人達は15時頃からそれぞれ車を乗り合わせて海に向かった。天気も味方し、青空が広がる。日差しは強いものの、7月上旬の北海道、海の水はまだ冷たく、泳ぐにはまだ早かった。
「よし、タッチフットやろうぜ。」
タッチフットとは、タックルの変わりにタッチすればプレーが終わるタッチフットボールだ。海に行っても、アメフトからは離れられない。プレーヤー達は上半身はシャツを脱ぎ裸で、頭にはタオルを巻いたスタイル。大学に入学して3カ月、体つきはだんだんとたくましくなっている。
「QBはマネージャー限定でやろう。」森保が言い出した。
「えっ、出来るかなー。」大島はまんざらでもなく、ボールを投げる練習をしている。
 マネージャーも、ビデオを撮ったりプレーノートを書いたりスカウティングのため、基本的なシステムやプレーの内容は勉強している。もちろん、ストレートやポスト、アウトなどのパスコースもばっちりだ。

 ひと通りタッチフットをしたり、足だけ海に入って初夏を感じたりしながら、ゆったりとした時間を過ごした。時間はバラバラだが、プレーヤー12人とマネージャー2人の全員が集まることが出来た。練習や試合以外で全員が揃うのは久しぶりだ。特に、ここ1週間は、児玉や朝長を始めとして試合デビュー戦へのプレッシャーがかかり、他の1年生も試合に出られるかもしれないと練習からピリピリした緊張感で過ごしてきたので、心の底から緊張をほぐすことが出来ていた。こんなゆったりした時間は、全員が望んでいたものだった。
 だんだん日が長くなってきたとはいえ、薄暗くなってきた。バイトや予定がある者達が、何人かずつ車に乗り合わせて帰って行った。それ以外の者達は、解散しようとも帰ろうとも言い出さず、もう少しこの海の潮風と波音に浸って、仲間たちとこの大切な時間を共有していたかった。
 
 この仲間達となら、4年間とても大切に時間を過ごすことが出来そうな気がした。



<第39話>

 そして、大学は前期試験期間に突入した。アメフト部は学内でも人数が多いため、各自のネットワークを駆使すれば、あらゆる科目の試験の過去問やノートのコピーなどは集まりやすい。
「宮脇は頭脳派だから、試験は問題ないか?」主将の高橋が聞いてきた。
「いえ、勉強はちょっと自信が・・・。」大学生になってから、毎日アメフト中心の生活で、身体だけではなく人間的にも大きく成長している自負はある。しかし、本業はというと、講義には概ね出席しているものの、やはりおろそかになっているのは間違いなかった。
「これは、本当にマズイぞ・・・。」宮脇は、嫌な汗をかきながらも必死で駆けずり回った。さすがアメフト部のネットワーク、過去問やノートなど、だいだいの科目の材料は揃った。しかし、どうしても集まらない科目が1つあった。どうにかして材料を集めなければならない。同じ講義を受けていて、真面目にノートを取っている人が1人だけ思い浮かんだ。それは、つい3週間ほど前に、告白してくれたテニス部の女の子だった。

 告白されて、ごめんなさいって言ったばかりなのに、「ノートコピーさせてくれない?」と連絡するのは、僕にとってかなりのハードルの高さだった。別に彼女をだましたわけでもないし、裏切ったわけでもない。同じ講義を受けている仲間なんだから、連絡するくらいは問題ないはずだ。そして、背に腹はかえられない。
「もしもし、宮脇だけど。ごめんね、今大丈夫?」緊張で汗ばみながら、電話をかける。
「あっ・・・。宮脇くん、どうしたの?」テニス部の彼女も緊張がうかがえる。
 多少会話がぎこちないものの、彼女は快くノートをコピーさせてもらえることになった。その科目のテストは金曜日なので、月曜日の昼休みにノートを借りることになった。
 
 そして月曜日。テスト前のラストスパートで寝不足な僕は、午前の試験をなんとか粘り、昼休みとなった。テニス部の彼女と会い、無事にノートを借り、明日の昼休みに返すことにした。
「ありがとう。本当に助かったよ。今度、お礼に何か奢るね。考えておいて。」僕は、感謝の気持ちを表すために、食事でのお礼を切り出した。
「お礼なんていらないよ。困った時はお互い様だから、気にしないで。それとね・・・。」彼女が言いにくそうな素振りで、続ける。
「実は、わたし、テニス部の先輩とお付き合いすることになったんだ。だから、もう2人でご飯とにはいけないの。ごめんなさい。」

 ああ、青春って素晴らしいな。



<第40話>

 無事にかどうかわからないが、とりあえず前期試験が終了した。試験期間は2週間だが、ほとんどの試験が1週目に集中していたため、1週目の自主練は半分くらいしか参加できなかったが、2週目は月曜日から自主練に参加することが出来た。せっかく春から蓄積してきたアメフトの感覚とか体力とかを落とすのはもったいないので、1週目に試験が集中したおかげで、すぐにアメフト中心の生活に戻ることが出来た。

 試験期間中は、自主練であり、試験のない午前中や夜にウエイトトレーニングや走りこみをする者がいたりと、いつもの練習時間に参加出来るメンバーが毎日7割程度だったので、全体練習は出来ず、各パートやユニット単位での練習が続いた。
 LBの僕達は、オプション対策として、DLと連携したブリッツやチャージの動き方を集中して特訓した。試験期間が終わると、シーズンまではほぼ実戦形式の練習ばかりとなる。この期間に、基礎は徹底的に叩きこまなければならない。他のポジションも、先の試合で足りなかったところや秋の試合で必要となるところを中心に、実戦形式の練習ばかりとなる前に、個々で集中して取り組める重要な機関となった。

 そして試験期間中にもう一つ出来事があった。自主連をしていると、グラウンドに1人の大男がやってきた。180cmを超え、体重も00kgはありそうながら、筋肉質。アメリカ人だ。名前は、ジャスティン。アメリカはノースカロライナ州から3カ月の短期留学でうちの大学に来たらしい。日本語が話せず、僕らは片言の英語でのコミュニケーションなので、詳しいところは良く分からない。でも、高校時代はアメフト部でDE(守備ライン)をやっていたらしい。久しぶりに身体を動かしたいとのことであり、予備のヘルメットとマウスピース、そして防具を使い、自主連に加わった。

 ジャスティンは、アメフトはブランクがあるものの、筋肉質なガタイでパワフルだ。ライン対決では、朝長でも敵わない。先の試合では、朝長はパワーでこそ大きく負けなかったものの、技術的に相手にやられたプレーが多かった。児玉が受けたQBサックも朝長に一因があった。試合では強い相手に揉まれるものの、練習では既に朝長と対等に戦える者がいなくて、やや物足りなさを感じていたところだ。朝長は、ジャスティンのパワーとアメフト経験者の技術を目の当たりにして、胸が熱くなった。
「何が何でも、これから毎日練習につきあってもらうぜ。」朝長は、英語でどうやって伝えればいいのかわからなかったが、こいつを手放してはいけないことはわかっていた。ジャスティンは、留学してきたばかりで時間を持て余しており、3日に2日は練習に顔を出し、朝長との熱い戦いを繰り広げてくれた。

 こうして、8月に入り、秋のシーズンまで残り1ヶ月となった。



<登場人物>
・宮脇拓哉/みやわきたくや
 …主人公(僕)。1年生。LB(守備)。
・児玉悠斗/こだまはると
 …1年生。アスリートで自信家。QB(攻撃)
・朝長幹男/ともながみきお
 …1年生。巨漢。AKB好き。OL(攻撃)兼DL(守備)
・高橋湊斗/たかはしみなと
 …アメフト部主将兼オフェンスリーダー。4年生。RB(攻撃)。
・柏木行雄/かしわぎゆきお
 …アメフト部副将兼ディフェンスリーダー。4年生。LB(守備)
・前田奈津子/まえだなつこ
 …4年生。主務兼女子マネージャー。
・大島陽子/おおしまようこ
 …1年生。女子マネージャー。
・森保/もりやす
 …1年生。高身長。WR(攻撃)。
・田島/たしま
 …1年生。万能タイプ。DB(守備)。
・多田/おおた
 …3年生。DB(守備)からアナライジングスタッフに転向。


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kou_blue97

〇札幌生まれ札幌育ち。現在は東京在住(←徳島←千葉…)。転勤族のサラリーマン。ミスチル世代の団塊ジュニア。
〇好きなモノ
 アメフト観戦、ミスチル鑑賞、blog執筆、子供とおでかけ、宮脇咲良を応援、転勤で知らない土地を満喫、現実と妄想の狭間で微笑ましく生きる、小さな幸せのかけらを積み重ねる。

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