2015年09月25日

もしアメフトの魅力を・・・物語を書くとしたら (第6章)

もしアメフトの魅力を知ってもらうための物語を書くとしたら

第6章 新システムの導入

<第16話>


 春の初戦に勝利したことが大きな自信となり、翌週からも気合いが入ったまま、また普段の練習に取組むことが出来た。特に、初めて試合で結果を残せた2年生を中心とした若手メンバーは高い意識で練習に臨み、そんな先輩達の勇姿を間近で見て刺激を受けた僕達1年生は、さらに高い意識で練習に励むことが出来た。次の試合までは約1ヶ月。それまでの頑張りによっては、1年生も試合に出してくれる、その主将の言葉を胸に、僕も精一杯練習を頑張れた。このチームの成長と雰囲気が、ずっと長い間続いていくものだと誰もがそう信じていた。
 しかし、それは長くは続かなかった。新しく導入する攻撃体型、フレックスボーン。新システム。この新システムの導入そしてチームへの浸透は、予想よりも難しく、大きな壁として立ちはだかった。

 まずは、新たにQB(クォーターバック)に指名された1年生の児玉が、新たに覚えるパスコースやランプレーの種類に追われ、練習ではいつも手探り状態となり、持ち前の思い切りの良さは消えていた。そして、焦りや重圧から単純なミスも増え始め、負の連鎖に飲み込まれ始めていた。
 次に、新システムで新たにSB(スロットバック)のポジションが置かれることとなり、今までRB(ランニングバック)で成長していた2人(先の試合で活躍した2年生と3年生)がSBのポジションにつくこととなった。児玉と同じく、新たに覚えるパスコースやランプレーの種類に追われる状況であり、せっかく試合で得ることが出来た自分への自信が、失われ始めていた。
 ポジションが変わることがないOL(オフェンスライン)やWR(ワイドレシーバー)も、それぞれ求められる役割と技術が今までとは異なる部分が増え、彼らもまた基本からやり直す必要があった。

 春の初戦でチームとしての第一歩を踏み出し、旧システムでのプレーの完成度は高まり、昨年度からの成長を肌で感じられた2年生以上のプレーヤーには、今まで築きあげてきたものが全て音を立てて崩れ去り、また0からのスタートに戻ってしまったような喪失感が大きく感じられた。
 その思いは、人によっては焦りに、また人によってはプレッシャーに形を変え、「このままで秋のシーズンに間に合うのか」という不安や不信感として、プレーヤー達の心の中に芽生え始めてしまっていた。

 秋のシーズン開幕まで、残り3カ月。



<第17話>

 練習の後、部室でマネージャーが撮ってくれた練習ビデオを見ながら反省するのがアメフト部の毎日の日常だ。同じプレーを何度も何度も巻き戻し再生して、1人1人の動きが間違えていないか、システム的に問題ないかどうか、チェックする。一通りチェックが終わった後、過去の試合のビデオや関東関西リーグの試合のビデオなどを見る日もある。そんな時、1年生の中で最後まで先輩達と部室に残るのは、僕と児玉の2人だ。僕達は純粋にアメフトが好きだからということもあるし、少しでも詳しくなりたい思いもある。

「よし、飯食いに行こうぜ。」主将の高橋が、最後まで残っていた僕と児玉、新しくSB(スロットバック)となった2人を誘い、近所の定食屋に向かう。ご飯が大盛りでボリュームがたっぷりの店だ。トンカツ定食が有名。僕は、ビタミンよりもタンパク質で身体を大きくしたいので、チキンカツ定食を頼む。僕のこだわりだ。
「勉強熱心の宮脇、フレックスボーンについては詳しくなったか?」主将が話しかける。
「RBが1人しかいなくて、WRが2人とSBが2人なので、パスが中心となるシステムに思えます。」僕が応える。
「そう見えるよな。そう見えて欲しい。うちのチームの一番の武器は、QB児玉の走力とRB高橋(俺)の走力だ。走力では絶対に負けない。ランプレーで勝つ。」トンカツを頬張りながら、主将が続ける。
「しかし、プロI体型からのオプション攻撃やウィッシュボーン体型(RBが3人)とかランプレーに強いシステムも考えたが、それだと相手守備もランプレーに特化して守りやすくなる。分が悪い。あえてフレックスボーンでパスを意識させながら、QB児玉は肩も強く投げれるから実際にパスを織り交ぜて、守備の意識を広く分散させたうえで、俺と児玉のランプレーで切り込む。的を絞らせない攻撃だ。このシステムを上手くチームに浸透させれば、1部リーグでも戦える。」主将は自信を持って言い切る。
「SBは初めてで経験者もいませんが、何を第一に意識すればいいですか?」大きな不安を抱えるSB陣が質問する。
「お前ら2人は、昨シーズンはRBとして活躍してくれた。SBは、UBと同じくリードブロックやパスブロックを意識するとともに、TBの走力を生かしてパスコースにも出てもらう。またローテーションでRBも入るので、活躍の場は広がった。覚えることは多いが、ランにパスと縦横無尽に暴れて欲しい。」主将がまた熱く語り出す。
「児玉は、もっと自信持てよ。らしくないぞ。パスは、ショートのタイミングパスを中心に、WRとSBと息を合わせてくれ。肩の強さは申し分ないから、後はタイミングだ。繰り返し練習しろ。パスが脅威になればなるほど、俺達のランの鋭さと切れ味は増す。楽しみだろう?」主将の熱さは止まらない。
「そして俺。俺は、シチュエーションに応じて速いタイミングのランプレーも出来るようにセットを近づける。ドロー、スクリーン、フレアーパスとフィールドを駆け巡る。そして、パスも投げる。」

 全員が主将の夢に引き込まれていった。



<第18話>

 6月に入り、チームはまた1歩ずつ成長を始めていた。主将の想いを何度も繰り返し聞くうちに、「新システムが完成すれば、絶対に勝てる。」というイメージがみんなの中に生まれ始め、練習を重ねる毎にそのイメージが大きく膨らみ、自信に変わっていった。

 特に、QBの児玉はもともと身体能力と意識が高く、彼の心の中で自信が湧いてくるとともに、プレーの質も高まった。QBのモチベーションが上がり、プレーと気持ちに自信を持ってリーダーシップを発揮出来れば、チームは活性化する。パスの呼吸も少しずつ合い、それぞれのポジションが自分の役割を理解し始めてきた。
 
 オフェンスチームの活性化にとって、同じ1年生の朝長の影響も大きかった。チームで1番の体格を有するとともに、持ち前の根性と我慢強さを発揮し、ウェイトトレーニングから防具を身に付けたヒットの練習まで、熱心に取り組んだ。彼はチームのエースラインメンとして、攻撃でも守備においても秋のシーズンで活躍することを誰もが期待しており、朝長はその周囲の期待をひしひしと感じていた。朝長は、期待される喜びと、その期待の大きさとともに比例するプレーシャーを理解した上で、その全てをエネルギーに代えることが出来た。「俺がこのチームを支えられる存在になる。」という使命感が彼には心地よいものだった。

 そして、僕もウェイトトレーニングや防具を身に付けたヒットの練習が認められ、やっとスクリメージ練習(実戦形式)に参加させてもらうことが出来るようになった。とは言っても、ダミーチームが中心であるが。アメフトのスクリメージ練習では、ダミーチームが存在する。分りやすく言えば、仮想相手チームである。例えば、オフェンスの実戦練習を行う場合は、レギュラー11人が攻撃メンバーに入りフレックスボーン(新システム)を組み、残り11人がダミーチームの守備メンバーに入って、相手チームのスカウティングや分析によって想定される守備体型を組む。逆に、ディフェンスシステムの実戦練習を行う場合は、守備のレギュラー11人がシステムを組み、残り11人がダミーチームの攻撃メンバーとして想定される攻撃体型を組む。

 僕の出番は、攻撃の実戦練習の時に、ダミーチームの守備陣として念願のLB(ラインバッカー)のポジションが与えられる。もちろん、仮想相手チームのLBに成り切らなければならないので、想定される動き(ランを重視する等)をすることとなるが、それでも楽しいし、勉強になる。LBとして成功するには様々なプレーを経験することが大切なので貴重な経験だ。頭では理解していても、実戦で見てみなければわからないこともたくさんある。そしてもう1つ。主将の熱い想いが詰まったフレックスボーンを一番間近で体験できることが大きな幸せだ。これが進化していく過程を見られるのは楽しみだ。僕は、僕のダミー守備陣の立場から、フレックスボーンの欠点やさらに発展の可能性を見つけ出すことが大きな使命となることを感じていた。

 「何かを感じ、何かを見つけ出したい」


kou_blue97 at 00:00│Comments(0)TrackBack(0) 后箆∈椒轡蝓璽困發痢 | 検淵▲瓮侫箸里海函

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kou_blue97

〇札幌生まれ札幌育ち。現在は東京在住(←徳島←千葉…)。転勤族のサラリーマン。ミスチル世代の団塊ジュニア。
〇好きなモノ
 アメフト観戦、ミスチル鑑賞、blog執筆、子供とおでかけ、宮脇咲良を応援、転勤で知らない土地を満喫、現実と妄想の狭間で微笑ましく生きる、小さな幸せのかけらを積み重ねる。

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