2015年09月16日

もしアメフトの魅力を・・・物語を書くとしたら (第3章)

もしアメフトの魅力を知ってもらうための物語を書くとしたら

第3章 チーム目標

<第7話>

 春の合宿も、折り返し地点である中日(なかび)を迎えた。普段は午前と午後の二部練習だが、この日は午前のみの練習となっており、ハードワークで疲労した身体を少し休めるために昼食後は昼寝をし、15時から時間をかけたミーティングが行われる。

 1年生は基礎中心の別メニューとは言え、肉体的な疲労は相当蓄積されている。いくらアメフトが「大学から始めるみんなが同じスタート」のスポーツだとしても、高校時代に体育会系の部活で鍛えた者と、僕のように高校時代に帰宅部だった者の差は大きい。勧誘されて今年入部した部員15人のうち、高校での部活経験者は10人で、帰宅部は5人。やはり高校での部活経験者は体力的には強く、時にラグビー部、サッカー部、野球部などの出身者は、即戦力と期待されていた。一方、帰宅部出身者は体力的に練習についていくのがやっとだったが、中学時代までは何らかのスポーツを経験した者ばかりであり、高校時代に部活をやっていなかった先輩達がグラウンドで激しくプレーをしているのを見ると、体力さえ戻れば俺も活躍出来るはずだと勇気付けられた。しかしながら、帰宅部出身の5人のうち、入部1ヶ月で3人が辞めた。やはり、体力的についていけないのが理由だった。帰宅部出身で残っているのは、僕(宮脇)と朝長の2人のみとなった。

 僕は、「とりあえずやると決めたからには1年間は絶対に続ける。もし体力的に、または能力的にどうしてもついていけない場合は、1年経った段階で考える。でも、最低1年間は根性見せてやる。」そう決めていた。アメフトの楽しさとか魅力とかは、たぶんそれなりに苦しい思いを乗り越えないと味わえないだろうということは、容易に想像できた。少しでもアメフトの魅力を味わえないまま、負け犬のように去ることだけはしたくなかった。しかし、合宿もまだ半分終わっただけの段階で、全身の筋肉痛は普段想像していた限界値を超えており、正直「1年も持つだろうか」と不安が芽生え始めていた。

 朝長は、中学時代の柔道部での経験では、主に顧問の先生からのみ期待され、ただ逆らえずに厳しい練習に耐えるものだった。先生は恐ろしく、自分から辞めるなんて言い出せるわけなどなく、卒業までその苦痛は続くこととなった。肉体的な成長以上に、根性を初めとする精神的な成長を得られることが出来たが、「もう二度と柔道なんか、スポーツなんかやるものか」と、中学卒業の時に堅く心に決めた。しかし、今や先輩を含めてもアメフト部内No.1の体格を有していることからも、非常に厳しい練習に耐えなければならないのは昔と同じであったが、高橋主将を初めとする先輩部員達からも、そして前田奈津子先輩を初めとする先輩マネからも、真に必要とされ、真に期待されることで、味わったことのない高いモチベーションを得られる日々だった。高校時代は、部屋で一人AKBを観るのが自分の唯一の居場所かと内に籠ってしまう時間もあった。

しかし、彼は今、本当の自分の居場所を見つけることが出来たのだった。



<第8話>

 春合宿中日、午後の全体ミーティング。部員30人(4年生5人、3年生5人、2年生8人、1年生12人)とマネージャー5人(4年生1人、2年生2人、1年生2人)が揃う中で、主将の高橋が全員の前で伝える。

「1年も含めて全員揃ったので、改めてこの機会に再認識して欲しい。昨シーズンは、『初勝利』という目標を掲げたが、目標は達成出来なかった。2年生以上は、その悔しさを痛いぐらい感じたはずだ。それを踏まえて、今年の目標は『2部優勝』。さらに高い目標を掲げた。客観的に見て、今のチームの戦力はおそらく2部リーグ6チームのうち最下位を争うところに位置している。しかし、どこのチームにも負けていない強みが2つある。1つは、卒業生がいないので、昨年からの戦力ダウンがなく、あの悔しさを味わった2年生以上の者全員に雪辱を果たすチャンスが与えられてること。もう1つは、新たに12人の新戦力が加入し、選手層が厚くなったことだ。2年生以上は、昨年の借りを返すために昨年以上の努力をしなければならないし、1年生は秋のシーズンには戦力となるよう努力をしなければならない。マネージャーには部の運営や練習のサポートだけではなく、戦術面での協力もしてもらうこととなる。まさしく、ここにいる全員の力が必要だ。」

 この場にいる全員が、主将の言葉を噛みしめる。

「そして、今年のスローガンは『トータルフットボール』だ。文字通り、全員で攻撃し、全員で守備を行うだけではなく、全員がどのポジションでも機能するチームを目指す。アメフトは、それぞれの特徴を生かしたポジションでの専門性を発揮するスポーツであり、1人が複数のポジションを出来るようにするには練習量や練習時間が必要であり、非効率でもある。しかし、アメフトはハードでありシーズンを乗り切るにはまさしく総力戦となる。スタメン全員が全てのプレーに参加出来ることは想定し難い。誰かがけがをしても、誰かがいなくても、システムとして機能し力を発揮し続けることが重要だ。そのためには、体力が必要であり、システムへの理解力とアメフトへの知識力が必要であり、何より高い意識が持たなければならない。今シーズン、最後のプレーが終わり、レフリーの最後の笛が鳴り止んだ時、笑って終われるシーズンにしよう!」全員の、大きな拍手が鳴り響いた。

「いや、笑って終われるシーズンなんかじゃなくて、4年生達を歓喜の涙で男泣きさせるシーズンにしようぜ!」というのが、僕達1年生の間では影のスローガンとなった。

 主将の頭の中では、「2部優勝」という目標に対し、目標設定に必要な3要素のうち、最初から充分に要件を満たしていた「具体的であること」及び「魅力的であること」に加え、一番の難関である「達成可能であること」についても、新入生の入部により充分に要件を満たすことになったものと確信していた。もちろん、この高い目標については、主務である前田とも事前に相談し、彼女の意向も充分に踏まえたものであった。



<登場人物>
宮脇拓哉/みやわきたくや
 …主人公(僕)。1年生。
高橋湊斗/たかはしみなと
 …アメフト部主将。4年生。
児玉悠斗/こだまはると
 …1年生。アスリートで自信家。
朝長幹男/ともながみきお
 …1年生。巨漢。AKB好き。
前田奈津子/まえだなつこ
 …4年生。主務兼女子マネージャー。


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kou_blue97

〇札幌生まれ札幌育ち。現在は東京在住(←徳島←千葉…)。転勤族のサラリーマン。ミスチル世代の団塊ジュニア。
〇好きなモノ
 アメフト観戦、ミスチル鑑賞、blog執筆、子供とおでかけ、宮脇咲良を応援、転勤で知らない土地を満喫、現実と妄想の狭間で微笑ましく生きる、小さな幸せのかけらを積み重ねる。

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